胃酸を抑える胃薬にはどんな種類がある?
胃痛や胸やけ、胃酸が上がってくる感じなどがあるとき、ドラッグストアでは「H2ブロッカー」「PPI」「制酸薬」など、胃酸に関係するさまざまな胃薬を目にします。
これらはすべて同じように働くわけではありません。
胃酸の分泌そのものを抑えるタイプと、すでに分泌された胃酸を中和するタイプでは、作用の仕組みが異なります。
また、2025年にはPPI(プロトンポンプ阻害薬)も市販薬として登場し、胃酸を抑える市販薬の選択肢が広がりました。厚生労働省の資料でも、H2ブロッカーとPPIは胃酸分泌を抑える薬として、それぞれ異なる作用機序を持つことが整理されています。
この記事では、H2ブロッカー、PPI、制酸薬の違いを整理し、胃酸に関係する胃薬を選ぶときの考え方を解説します。
H2ブロッカーとは?
H2ブロッカーは、胃にあるヒスタミンH2受容体の働きを抑えることで、胃酸の分泌を抑えるタイプの薬です。
市販薬ではファモチジンなどが代表的な成分です。
厚生労働省の資料でも、H2ブロッカーを含む一般用胃腸薬は、胃痛、胸やけ、もたれ、むかつきなどを対象とする薬として整理されています。
H2ブロッカーは胃酸そのものを中和する薬ではない
H2ブロッカーは、すでに胃の中にある胃酸を中和するのではなく、胃酸が分泌される仕組みに作用します。
そのため、
- 胃酸が関係すると考えられる胃痛
- 胸やけ
- 胃もたれ
- むかつき
などに用いられることがあります。
ただし、すべての胃痛や胃もたれが胃酸によって起こっているとは限りません。
症状だけで「胃酸が原因」と決めつけないことも大切です。
H2ブロッカーを使うときの注意
市販のH2ブロッカーには、服用できる年齢や使用期間などについて制限があります。
例えば、ファモチジンを含む一般用医薬品の添付文書では、3日間服用しても症状の改善がみられない場合は服用を中止して医師または薬剤師に相談し、2週間を超えて続けて服用しないよう記載されています。
そのため、「胃酸を抑える薬だから症状が続く間ずっと飲めばよい」と考えるのは適切ではありません。
PPIとは?
PPIは「プロトンポンプ阻害薬」のことで、胃酸分泌の最終段階に関わるプロトンポンプを阻害し、胃酸の分泌を抑えるタイプの薬です。
H2ブロッカーとは、胃酸分泌を抑える仕組みが異なります。
日本では2025年からラベプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾールなどのPPIが市販薬として登場し、胃酸に関係する症状に対する選択肢が増えています。厚生労働省の資料でも、PPIについて短期使用を前提としたOTC化が検討されています。
PPIとH2ブロッカーの違い
どちらも胃酸の分泌を抑える薬ですが、作用する場所が異なります。
- H2ブロッカー:ヒスタミンH2受容体を介した胃酸分泌を抑える
- PPI:胃酸分泌の最終段階に関わるプロトンポンプを阻害する
つまり、「どちらも胃酸を抑える」という点は共通していますが、同じ薬ではありません。
また、PPIの市販薬は、従来からある一般用胃腸薬とは販売区分や使用上の注意が異なる製品があります。
購入時には、薬剤師から説明を受ける必要がある製品かどうかも確認しましょう。
制酸薬とは?
制酸薬は、胃の中ですでに分泌されている胃酸を中和するタイプの薬です。
代表的な制酸成分には、次のようなものがあります。
- 水酸化マグネシウム
- 炭酸水素ナトリウム
- 炭酸カルシウム
- メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど
厚生労働省の資料でも、制酸薬は胃痛、胸やけ、胃酸過多、胃もたれ、胃部不快感などに用いられる一般用胃腸薬として整理されています。
制酸薬とH2ブロッカーの違い
大きな違いは、胃酸への作用の仕方です。
- 制酸薬:すでにある胃酸を中和する
- H2ブロッカー:胃酸が分泌される仕組みを抑える
そのため、「胃酸に関係する胃薬」という点では共通していますが、働き方は異なります。
また、制酸成分の種類によっては、他の医薬品との服用間隔などに注意が必要になる場合があります。
ほかの薬を服用している場合は、購入時に薬剤師や登録販売者へ相談しましょう。
H2ブロッカー・PPI・制酸薬の違いを比較
| 種類 | 胃酸への作用 | 特徴 |
|---|---|---|
| H2ブロッカー | 胃酸の分泌を抑える | ヒスタミンH2受容体に作用する |
| PPI | 胃酸の分泌を強く抑える | プロトンポンプを阻害する |
| 制酸薬 | すでにある胃酸を中和する | 胃酸による刺激を抑える |
簡単に覚えるなら、
「H2ブロッカー・PPIは胃酸を作る仕組みに作用し、制酸薬はすでにある胃酸を中和する」
という違いです。
ただし、同じ分類でも商品によって成分、含有量、効能・効果、用法・用量、使用できる年齢などが異なります。
実際に購入するときは、商品ごとの添付文書を確認してください。
胸やけ・胃酸の逆流が気になる場合は?
胸やけや、酸っぱいものが上がってくるような感じがある場合は、胃酸の逆流が関係している可能性があります。
このような症状では、胃酸の分泌を抑えるタイプの薬が選択肢になることがあります。
一方、胸やけが何度も繰り返す場合や、症状が長く続いている場合は、市販薬を使い続けるだけで済ませないことが重要です。
市販薬の使用期間には制限が設定されているものがあり、改善しない場合には医療機関への相談が必要になることがあります。
胃痛ならH2ブロッカーやPPIを選べばいい?
胃痛があるからといって、必ずH2ブロッカーやPPIが適しているとは限りません。
胃痛には、胃酸だけでなく、胃腸の運動、胃粘膜の状態、食事など、さまざまな要因が関係する可能性があります。
例えば、胃腸の痙攣による痛みを対象とする胃腸鎮痛鎮痙薬など、胃酸を抑える薬とは異なるタイプの胃薬もあります。
そのため、
「胃痛=胃酸を抑える薬」
と単純に判断するのではなく、どのような症状なのかを確認することが大切です。
胃痛の原因や症状に合わせた市販薬の考え方については、以下の記事でも詳しく解説しています。
市販の胃薬の選び方|胃痛・胃もたれ・胸やけ・胃酸など症状別に解説
胃薬は複数を一緒に使ってもいい?
胃酸を抑える薬や制酸薬などを、自己判断で複数重ねて使用するのは避けましょう。
胃薬にはさまざまな成分が配合されているため、複数の商品を使用すると、成分が重複したり、薬同士の相互作用が問題になったりする場合があります。
また、制酸成分などでは、ほかの医薬品との服用間隔に注意が必要になる場合があります。
現在ほかの薬を服用している場合は、胃薬を購入する前に薬剤師や登録販売者へ相談してください。
胃酸を抑える胃薬を使うときの注意点
胃酸を抑える薬は、症状が続くからといって自己判断で長期間使い続けるものではありません。
市販のH2ブロッカーでは、症状が改善しない場合の相談や、連用期間について添付文書に注意事項が記載されています。
PPIについても、市販薬として使用できる製品はありますが、短期間の症状改善を目的として使用されるものであり、漫然と使い続けることを前提としたものではありません。
胃痛や胸やけが繰り返す場合は、単純に「胃酸が多い」と考えず、原因を確認するために医療機関への相談を検討しましょう。
こんな症状がある場合は市販薬だけで様子を見ない
以下のような症状がある場合は、市販薬を使い続けるのではなく、医療機関への相談を優先してください。
- 強い胃痛がある
- 症状が急に悪化した
- 胃痛や胸やけが何度も繰り返している
- 市販薬を使用しても改善しない
- 吐血がある
- 黒い便が出る
- 食事がとれないほどの症状がある
- 原因が分からないまま症状が続いている
- 飲み込みにくさがある
特に、強い痛みや出血を疑う症状がある場合は、胃薬を追加して様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診してください。
胃酸を抑える胃薬はどう選ぶ?
H2ブロッカー、PPI、制酸薬は、いずれも胃酸に関係する症状に使われることがありますが、作用の仕組みは異なります。
- H2ブロッカー:胃酸の分泌を抑える
- PPI:胃酸分泌の最終段階に作用して抑える
- 制酸薬:すでにある胃酸を中和する
胃酸が関係する症状だからといって、必ずしも胃酸を強く抑える薬が適しているとは限りません。
胃痛、胃もたれ、胸やけなど、症状によって考え方は変わります。
そのため、市販の胃薬を選ぶときは、まず症状を整理し、そのうえで薬の種類や成分を確認することが大切です。
まとめ
胃酸に関係する市販薬には、H2ブロッカー、PPI、制酸薬などがあります。
H2ブロッカーとPPIは胃酸の分泌を抑える薬ですが、作用する仕組みが異なります。
一方、制酸薬はすでに分泌された胃酸を中和するタイプです。
胃痛や胸やけがある場合でも、原因がすべて胃酸とは限りません。
症状が続く場合や繰り返す場合には、市販薬を漫然と使用せず、医療機関や薬剤師、登録販売者に相談しましょう。
参考資料
- 厚生労働省|一般用医薬品の製品群と主な製品
- 厚生労働省|第33回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議
- PMDA|一般用医薬品・要指導医薬品情報
- PMDA|ファモチジンを含む一般用医薬品 添付文書

