下痢になると、「すぐに止めたい」「下痢止めと整腸薬はどちらを選べばいい?」「食あたりでも下痢止めを飲んでいい?」「何日くらいなら市販薬で様子を見ていい?」など、薬の選び方で迷うことがあります。
市販の腸の薬には、腸内環境を整える整腸薬、下痢を抑える止瀉薬などがあり、それぞれ目的や作用が異なります。
また、下痢は食べすぎや消化不良だけでなく、感染症などが原因で起こることもあります。
原因によっては、下痢を無理に止めることが適切でない場合もあるため、「下痢だから下痢止め」という選び方には注意が必要です。
この記事では、市販の下痢止めと整腸薬の違い、症状に応じた選び方、下痢止めを使用するときの注意点、医療機関を受診したほうがよい症状まで詳しく解説します。
下痢とは?
下痢は、便に含まれる水分が多くなったり、便が通常よりも軟らかくなったりして、排便回数が増える状態です。
下痢には、一時的に起こる急性のものと、長期間続く慢性のものがあります。
急な下痢は、食べすぎや消化不良、冷え、精神的なストレス、細菌やウイルスなどによる感染など、さまざまな原因で起こります。
そのため、下痢の症状だけを見て原因を決めることはできません。
市販の腸の薬にはどんな種類がある?
市販薬には、下痢に使われる止瀉薬だけでなく、腸内環境を整える整腸薬もあります。
主な違いを整理すると、次のようになります。
| 種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 整腸薬 | 腸内環境や便通を整える |
| 止瀉薬 | 下痢や軟便などを抑える |
| 生薬を含む整腸薬・止瀉薬 | 配合された生薬によって腸の状態を整える |
厚生労働省の手引きでも、整腸薬は腸の調子や便通を整え、腹部膨満感、軟便、便秘などに用いる薬、止瀉薬は下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便などに用いる薬として整理されています。
整腸薬と下痢止めは何が違う?
整腸薬
整腸薬は、腸内細菌のバランスなどを整え、腸の調子や便通を整えることを目的とした薬です。
代表的な配合成分として、ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などの生菌成分があります。
下痢だけでなく、便秘や腹部膨満感などを効能・効果としている製品もあります。
そのため、「下痢を強く止める」というよりも、腸の状態を整える目的で使用する薬と考えると分かりやすいでしょう。
止瀉薬
止瀉薬は、下痢や軟便などを抑えることを目的とする薬です。
腸の運動や分泌などに作用する成分や、腸内環境を整える成分など、さまざまなタイプがあります。
製品によって配合成分や効能・効果が異なるため、単に「下痢止め」という名前だけで選ばないことが大切です。
市販の下痢止めに使われる主な成分
市販の止瀉薬には、さまざまな成分が使用されています。
ロペラミド塩酸塩
ロペラミド塩酸塩は、腸管の運動を抑えることで下痢を抑える成分です。
市販の止瀉薬に使用されています。
ただし、感染性の下痢など、原因によっては下痢を止めることが適切でない場合があります。
製品の使用上の注意を確認し、発熱や血便などを伴う場合には自己判断で使用しないことが重要です。
タンニン酸アルブミン
タンニン酸アルブミンは、収れん作用などによって下痢を抑える目的で使用される成分です。
止瀉薬の配合成分の一つとして使用されています。
ベルベリン
ベルベリンを含む製品もあります。
腸内環境を整える目的などで使用される成分ですが、製品によって配合内容や効能・効果が異なります。
生薬成分
ゲンノショウコなど、整腸作用を期待して使用される生薬成分もあります。
生薬だから作用が弱い、あるいはどのような下痢にも使えるというわけではありません。
製品ごとの効能・効果や用法・用量を確認して使用しましょう。
下痢なら下痢止めを飲めばいい?
下痢が起こったからといって、必ずしも下痢止めを使用すればよいとは限りません。
下痢は、体内に入った有害な物質などを排出するための防御反応として起こることもあります。
特に、食あたりや感染症などが疑われる下痢では、原因や症状を考えずに下痢を止めることが適切でない場合があります。
そのため、下痢の原因が分からない状態で、強い下痢止めを自己判断で使用し続けることは避けましょう。
市販の下痢止めを選ぶ前に確認したい症状
下痢があるときは、次のような症状がないか確認しましょう。
- 発熱がある
- 血便がある
- 強い腹痛がある
- 繰り返し吐いている
- 水分を十分に取れない
- 脱水が疑われる
- 下痢が何度も続いている
- 下痢が長期間続いている
これらの症状がある場合は、単純な一時的な下痢ではない可能性があります。
市販の下痢止めで症状だけを抑え続けるのではなく、医療機関への相談を検討してください。
食あたり・感染性の下痢に下痢止めを使うときの注意
食あたりや感染症などが原因で下痢が起こることがあります。
このような場合、原因となっているものを体外へ排出することが体の防御反応になっている場合があります。
そのため、原因を考えずに下痢を止めることには注意が必要です。
特に、発熱、血便、強い腹痛などを伴う場合は、自己判断で下痢止めを使用せず、医療機関へ相談しましょう。
下痢のときは水分補給も重要
下痢が続くと、便と一緒に水分や電解質が失われることがあります。
そのため、下痢のときには水分補給を意識することが重要です。
一度に大量に飲むのではなく、症状に応じて少量ずつ水分を取る方法もあります。
ただし、激しい下痢や嘔吐が続いて水分を取れない場合は、脱水につながる可能性があるため、医療機関への相談を検討してください。
下痢止めと整腸薬を一緒に使ってもいい?
下痢止めと整腸薬は目的が異なるため、同じ「腸の薬」でも作用は同じではありません。
しかし、複数の医薬品を自己判断で併用すると、成分が重複したり、意図しない作用が起こったりする可能性があります。
特に、すでに別の市販薬を使用している場合や、処方薬を服用している場合は注意が必要です。
複数の薬を使いたい場合は、商品の成分表示を確認し、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。
下痢止めと他の市販薬を併用するときの注意
下痢止めだけでなく、かぜ薬、胃腸薬、鎮痛薬など、ほかの市販薬を使用している場合も注意が必要です。
市販薬には複数の成分が配合されている製品があるため、別の商品を追加すると同じ成分を重複して使用する可能性があります。
「別の症状だから別の薬」と考えるのではなく、現在使用している薬をすべて確認してから追加することが大切です。
処方薬を使用している場合は、自己判断で市販の下痢止めを追加せず、医師や薬剤師へ相談してください。
下痢止めを使っても改善しない場合
市販の下痢止めを使用しても症状が改善しない場合は、別の下痢止めを追加するのではなく、原因を確認することが重要です。
特に、下痢が何日も続く場合、何度も繰り返す場合、発熱や血便などを伴う場合には、市販薬だけで対応し続けないようにしましょう。
慢性的な下痢の場合は、腸の病気などが関係している可能性もあります。
こんな下痢は市販薬だけで様子を見ない
次のような症状がある場合は、市販薬だけで様子を見ず、医療機関への相談を検討してください。
- 血便が出ている
- 高い発熱がある
- 激しい腹痛がある
- 繰り返し嘔吐している
- 水分が取れない
- 尿が極端に少ない
- 強い口の渇きや倦怠感がある
- 下痢が長期間続いている
- 下痢を何度も繰り返している
- 市販薬を使用しても改善しない
特に血便、激しい腹痛、繰り返す嘔吐などがある場合は、自己判断で下痢止めを追加するのではなく、早めに医療機関へ相談しましょう。
子どもや高齢者の下痢は特に注意
子どもや高齢者では、下痢や嘔吐によって水分が失われることへの注意が必要です。
また、年齢によって使用できる市販薬が異なるため、大人と同じ下痢止めを自己判断で使用することは避けてください。
小児や高齢者が使用する場合は、製品の対象年齢や使用上の注意を確認し、必要に応じて薬剤師や登録販売者へ相談しましょう。
下痢止めを選ぶときのポイント
市販の下痢止めを選ぶときは、次の順番で確認すると分かりやすくなります。
① どのような下痢なのか確認する
単純な軟便なのか、急に起こった水様便なのか、腹痛や発熱などを伴っているのかを確認します。
② 下痢止めが適している状態か確認する
発熱、血便、激しい腹痛などがある場合は、自己判断で下痢を止めるより、医療機関への相談を優先します。
③ 整腸薬と止瀉薬を区別する
腸内環境や便通を整えることを目的とする整腸薬と、下痢を抑えることを目的とする止瀉薬では、薬の位置づけが異なります。
④ 成分を確認する
商品名だけではなく、配合成分や効能・効果を確認しましょう。
⑤ 使用期間を確認する
症状が続く場合に、下痢止めを漫然と使い続けないことが重要です。
市販の下痢止めの選び方まとめ
市販の腸の薬には、腸内環境や便通を整える整腸薬と、下痢を抑えることを目的とした止瀉薬があります。
下痢止めにもさまざまな成分があり、腸の運動などに作用するもの、腸内環境を整えるもの、収れん作用などによって下痢を抑えるものなどがあります。
そのため、「下痢なら強い下痢止め」という選び方ではなく、どのような症状なのかを確認してから薬を選ぶことが大切です。
特に、発熱、血便、激しい腹痛、繰り返す嘔吐などがある場合は、自己判断で下痢を止めるのではなく、医療機関への相談を検討してください。
また、市販薬を使用しても改善しない下痢や、何度も繰り返す下痢についても、原因を確認することが重要です。
参考資料
- 厚生労働省|登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)
- 厚生労働省|試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)第3章 主な医薬品とその作用
- PMDA|一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索

