補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、体力が低下していて、元気がなく、胃腸の働きが衰えて疲れやすい人に用いられる漢方薬です。
「疲れが取れない」「食欲がない」「病気や手術のあとから体力が落ちた」といった場合などに用いられます。
この記事では、補中益気湯の特徴や効能・効果、含まれる生薬、飲み方、副作用、注意点についてわかりやすく解説します。
補中益気湯とは?
補中益気湯は、漢方医学で用いられてきた処方の一つです。
一般用医薬品では、体力虚弱で、元気がなく、胃腸の働きが衰えて、疲れやすい人の次のような症状に用いられます。
- 虚弱体質
- 疲労倦怠
- 病後・術後の衰弱
- 食欲不振
- ねあせ
- 感冒
つまり、単に「疲れている人」すべてに使う漢方薬ではなく、体力が弱く、胃腸の働きも衰えているタイプの疲れが一つの目安になります。
漢方薬は症状だけでなく、体力や体質などを含めて「証」を考えて選ぶことが重要です。
漢方薬の「証」とは?|体質や症状に合わせた漢方薬の選び方を解説
補中益気湯の「補中」と「益気」とは?
「補中益気湯」という名前には、この漢方薬の考え方が表れています。
「補中」は、漢方でいう「中」、つまり胃腸などの働きを補うという意味で使われます。
「益気」は、気を益する、つまり不足していると考えられる「気」を補うという意味です。
ただし、これは漢方医学における考え方であり、現代医学でいう特定の栄養素やホルモンを補充するという意味ではありません。
補中益気湯はどんな人に向いている?
一般用漢方製剤の承認基準では、補中益気湯は「体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいもの」が対象です。
そのため、次のような状態が一つの目安になります。
- もともと体力が弱い
- 疲れやすく、だるさを感じる
- 食欲が落ちている
- 病気のあとに体力が落ちた
- 手術後などで体力が低下している
- ねあせが気になる
一方で、体力が十分にあり、単純に一時的な疲労を感じているだけの場合などは、補中益気湯が適しているとは限りません。
補中益気湯の主な効能・効果
一般用医薬品としての補中益気湯の効能・効果は、次のとおりです。
体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:
- 虚弱体質
- 疲労倦怠
- 病後・術後の衰弱
- 食欲不振
- ねあせ
- 感冒
商品によって効能・効果の表現や用法・用量が異なる場合があるため、実際に服用する際は購入した商品の添付文書を確認してください。
補中益気湯に含まれる生薬
一般用漢方製剤承認基準の補中益気湯には、次の生薬が用いられます。
- 人参(ニンジン)
- 白朮(ビャクジュツ)または蒼朮(ソウジュツ)
- 黄耆(オウギ)
- 当帰(トウキ)
- 陳皮(チンピ)
- 大棗(タイソウ)
- 柴胡(サイコ)
- 甘草(カンゾウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 升麻(ショウマ)
商品によってエキスの量や製剤の形などは異なります。
特に補中益気湯には甘草が含まれているため、他の漢方薬などとの併用では、生薬の重複に注意が必要です。
漢方薬の併用・飲み合わせ|一緒に使うときの注意点と生薬の重複
補中益気湯の飲み方
補中益気湯の用法・用量は製品によって異なります。
一般的なエキス顆粒製剤では、成人の場合、1日3回、食前または食間に服用するタイプがあります。
ただし、錠剤などでは服用回数や1回量が異なる商品もあります。
「補中益気湯だから必ずこの量」というわけではないため、実際に使用する製品の添付文書に記載された用法・用量を守ることが大切です。
漢方薬の「食前」「食間」の意味については、こちらの記事で詳しく解説しています。
漢方薬の飲み方を解説|食前・食間の違い、効果が出るまでの期間や飲みにくいときの工夫
補中益気湯の副作用
補中益気湯は漢方薬ですが、医薬品であるため副作用が起こる可能性があります。
一般用医薬品の添付文書では、発疹・発赤、かゆみなどの皮膚症状が記載されている製品があります。
また、まれに間質性肺炎や肝機能障害などの重篤な副作用が記載されている製品もあります。
次のような症状が現れた場合は、服用を中止して医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
- 発疹・発赤、かゆみ
- 息切れ、息苦しさ
- 空せき
- 発熱
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 褐色尿
- 強いだるさ
- 食欲不振
漢方薬の副作用についてはこちらでも詳しく解説しています。
補中益気湯で注意したい「甘草」
補中益気湯には甘草が含まれています。
甘草を含む漢方薬などを重複して使用すると、場合によっては偽アルドステロン症や低カリウム血症、ミオパチーなどにつながることがあります。
特に、複数の漢方薬を同時に使用している場合は注意が必要です。
「漢方薬だから別の漢方薬と一緒に飲んでも問題ない」とは限りません。
複数の漢方薬を使用する場合は、成分や生薬の重複を確認しましょう。
補中益気湯を服用する前に相談したほうがよい人
一般用医薬品の添付文書では、医師の治療を受けている人、妊娠中または妊娠していると思われる人、薬などで発疹・発赤・かゆみなどを起こしたことがある人などは、服用前に医師、薬剤師または登録販売者へ相談するよう記載されています。
製品によっては高齢者についても相談するよう記載されています。
また、持病がある人や複数の薬を使用している人は、自己判断で使用せず、専門家に確認することをおすすめします。
補中益気湯と「疲れに効く」は同じではない
補中益気湯は「疲労倦怠」に用いられる漢方薬ですが、疲れている人なら誰にでも適しているわけではありません。
補中益気湯が対象としているのは、体力が虚弱で、元気がなく、胃腸の働きが衰えて疲れやすいという状態です。
疲労の原因には、睡眠不足、過労、感染症、貧血、甲状腺の病気など、さまざまなものがあります。
疲れが長期間続いている場合や、体重減少、発熱、息苦しさなどを伴う場合には、漢方薬だけで対処せず、医療機関への相談を検討してください。
補中益気湯とほかの漢方薬の違い
| 漢方薬 | 主な特徴 |
|---|---|
| 補中益気湯 | 体力虚弱で、元気がなく、胃腸の働きが衰えて疲れやすい |
| 防已黄耆湯 | 体力中等度以下で、疲れやすく汗をかきやすい、むくみなど |
| 防風通聖散 | 体力が充実し、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな肥満症など |
同じ「体調が悪い」「だるい」「太った」といった悩みでも、漢方薬によって対象となる体質や症状は異なります。
例えば、防風通聖散は体力が充実しているタイプを対象とするのに対し、補中益気湯は体力虚弱で疲れやすいタイプが対象です。
防風通聖散とは?|肥満症・便秘・むくみに使われる漢方薬の効果・副作用を解説
防已黄耆湯とは?|むくみ・水ぶとりの肥満症・多汗症に使われる漢方薬を解説
補中益気湯についてよくある質問
補中益気湯は疲労回復に使えますか?
一般用医薬品では、体力虚弱で元気がなく、胃腸の働きが衰えて疲れやすい人の疲労倦怠などに用いられます。
ただし、疲労の原因や体質によって適した漢方薬は異なります。
補中益気湯は食欲不振にも使えますか?
はい。一般用医薬品の補中益気湯には、体力虚弱で元気がなく、胃腸の働きが衰えて疲れやすい人の食欲不振が効能・効果として含まれています。
補中益気湯は誰でも飲めますか?
誰にでも適しているわけではありません。
体力や体質、現在の症状によって適否が異なります。また、治療中の病気がある人、妊娠中の人、ほかの薬を使用している人などは、服用前に医師、薬剤師または登録販売者へ相談してください。
補中益気湯とほかの漢方薬を一緒に飲めますか?
自己判断で複数の漢方薬を併用するのは避けたほうがよい場合があります。
特に甘草など、共通する生薬が含まれている処方では重複に注意が必要です。
併用する場合は、それぞれの添付文書を確認し、必要に応じて医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
まとめ
補中益気湯は、体力が虚弱で、元気がなく、胃腸の働きが衰えて疲れやすい人に用いられる漢方薬です。
一般用医薬品では、虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒などが効能・効果として認められています。
一方で、疲労の原因はさまざまであり、「疲れているから補中益気湯」という単純な選び方は適切ではありません。
漢方薬は症状だけでなく、体力や体質などを含めて選ぶことが大切です。また、複数の漢方薬を使用する場合は生薬の重複にも注意しましょう。

