加味逍遙散(かみしょうようさん)は、更年期障害や月経不順、月経困難、冷え症、不眠症など、女性にみられるさまざまな不調に用いられる漢方薬です。
特に、のぼせ感があり、肩がこる、疲れやすい、精神的に不安定になりやすい、いらだちがあるといった症状を伴う場合に用いられます。
この記事では、加味逍遙散の特徴や効能・効果、含まれる生薬、副作用、服用時の注意点についてわかりやすく解説します。
加味逍遙散とは?
加味逍遙散は、女性に多くみられる月経や更年期に伴う心身の不調などに用いられる漢方処方です。
一般用漢方製剤の承認基準では、体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状があり、ときに便秘の傾向がある人の症状に用いられる処方とされています。
具体的な効能・効果として、以下の症状が挙げられています。
- 冷え症
- 虚弱体質
- 月経不順
- 月経困難
- 更年期障害
- 血の道症
- 不眠症
「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など、女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状や身体症状を指します。
厚生労働省の一般用漢方製剤承認基準でも、加味逍遙散はこのような症状を対象とする漢方薬として位置づけられています。
加味逍遙散はどんな症状に使われる?
加味逍遙散は、単に「更年期に使う漢方薬」というだけではありません。
月経や更年期などに関連して、身体面と精神面の両方に不調がみられる場合に使用されることがあります。
更年期の不調
更年期には、のぼせ、冷え、疲れやすさ、肩こり、気分の不安定さ、不眠など、さまざまな症状が現れることがあります。
加味逍遙散は、こうした症状のうち、のぼせ感や精神不安、いらだち、肩こり、疲れやすさなどを伴うタイプに用いられます。
更年期に使われる漢方薬については、以下の記事でも詳しく解説しています。
更年期・生理前の不調に漢方薬|女性に多い症状と漢方の考え方を解説
月経不順・月経困難
加味逍遙散は、月経周期が乱れる月経不順や、月経に伴うつらい症状である月経困難にも用いられます。
ただし、月経に関する症状にはさまざまな原因があるため、症状が強い場合や長期間続く場合は、漢方薬だけで対応せず婦人科などで原因を確認することも重要です。
冷え症や疲れやすさ
加味逍遙散の効能・効果には、冷え症や虚弱体質も含まれています。
特に、冷えだけではなく、疲れやすさや肩こり、精神不安、いらだちなど複数の症状が組み合わさっている場合に、その人の体質や症状を考慮して使用されます。
不眠
加味逍遙散は、不眠症にも用いられる漢方薬です。
ただし、不眠の原因はストレス、生活リズム、身体疾患、精神疾患、他の薬剤などさまざまです。
眠れない状態が長く続く場合や、日中の生活に支障が出ている場合は、原因の確認が必要です。
加味逍遙散に含まれる生薬
一般用漢方製剤の承認基準では、加味逍遙散には以下の生薬が配合されています。
- 当帰(とうき)
- 芍薬(しゃくやく)
- 白朮(びゃくじゅつ)※蒼朮の場合もあります
- 茯苓(ぶくりょう)
- 柴胡(さいこ)
- 牡丹皮(ぼたんぴ)
- 山梔子(さんしし)
- 甘草(かんぞう)
- 生姜(しょうきょう)
- 薄荷葉(はっかよう)
製品によってエキスの量や剤形などが異なるため、実際に服用する場合は製品の添付文書を確認してください。
加味逍遙散と「逍遙散」の違い
加味逍遙散には、名前が似ている「逍遙散」という漢方処方があります。
加味逍遙散は、逍遙散をもとに牡丹皮や山梔子などを加えた処方です。
どちらも女性の月経や更年期に関連する症状などに用いられますが、効能・効果や構成する生薬が異なります。
そのため、「女性の症状だから加味逍遙散」という単純な選び方ではなく、症状や体質などを考慮して選択することが大切です。
漢方薬では、このような「証」に基づいた考え方が重要になります。
詳しくは以下の記事で解説しています。
漢方薬の「証」とは?|体質や症状に合わせた漢方薬の選び方を解説
加味逍遙散の副作用
加味逍遙散も医薬品であるため、副作用が起こる可能性があります。
一般的な副作用として、発疹・発赤、かゆみ、吐き気、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、腹痛などが記載されています。
また、加味逍遙散には甘草が含まれているため、甘草を含む他の漢方薬などとの併用には注意が必要です。
偽アルドステロン症・ミオパチー
甘草を含む漢方薬では、まれに偽アルドステロン症やミオパチーが起こることがあります。
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばり、脱力感、筋肉痛などが現れ、徐々に強くなる場合には注意が必要です。
このような症状がある場合は服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
腸間膜静脈硬化症
加味逍遙散には山梔子が含まれています。
山梔子を含む漢方製剤を長期間服用した場合、まれに腸間膜静脈硬化症が起こることがあります。
腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などが繰り返し現れる場合には、服用を中止して医療機関に相談することが重要です。
加味逍遙散についても、長期服用時の注意として腸間膜静脈硬化症が添付文書に記載されています。
肝機能障害
医療用の加味逍遙散製剤では、まれに肝機能障害や黄疸が起こる可能性も記載されています。
だるさ、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなど、気になる症状が現れた場合には医療機関に相談してください。
加味逍遙散を服用するときの注意点
加味逍遙散を服用するときは、他の漢方薬や医薬品との重複にも注意しましょう。
特に、複数の漢方薬を同時に使用すると、生薬が重複することがあります。
加味逍遙散には甘草が含まれているため、甘草を含む他の漢方薬などを併用すると、甘草の摂取量が増える可能性があります。
漢方薬の併用については、以下の記事も参考にしてください。
漢方薬の併用・飲み合わせ|一緒に使うときの注意点と生薬の重複
加味逍遙散はいつ飲む?
漢方薬は製品によって用法・用量が異なるため、実際には購入した製品の添付文書に従って服用してください。
一般用漢方製剤では、食前または食間に服用する製品が多くあります。
「食前」「食間」の意味や漢方薬を飲むタイミングについては、以下の記事で詳しく解説しています。
漢方薬の飲み方を解説|食前・食間の違い、効果が出るまでの期間や飲みにくいときの工夫
加味逍遙散はどんな人に向いている?
加味逍遙散は、誰にでも同じように適している漢方薬ではありません。
一般用漢方製剤の承認基準では、以下のような特徴が示されています。
- 体力が中等度以下
- のぼせ感がある
- 肩がこる
- 疲れやすい
- 精神不安やいらだちがある
- ときに便秘の傾向がある
- 冷え症や月経不順、更年期障害などがある
このように、漢方薬は病名だけではなく、症状の組み合わせや体質なども考慮して選択します。
そのため、「更年期だから加味逍遙散」というだけで自己判断するのではなく、自分の症状に合っているかを確認することが大切です。
加味逍遙散と他の漢方薬との違い
女性の月経や更年期に関連する症状に使われる漢方薬には、加味逍遙散以外にもさまざまな処方があります。
例えば、当帰芍薬散や桂枝茯苓丸なども女性の症状に用いられる代表的な漢方薬です。
同じ「更年期の症状」でも、体質や症状の組み合わせによって選択される漢方薬が異なるため、処方名だけで判断しないことが重要です。
今後、それぞれの漢方薬についても詳しく解説していきます。
まとめ|加味逍遙散は女性のさまざまな不調に用いられる漢方薬
加味逍遙散は、体力中等度以下で、のぼせ感、肩こり、疲れやすさ、精神不安やいらだちなどを伴う人の、冷え症、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症などに用いられる漢方薬です。
一方で、甘草による偽アルドステロン症やミオパチー、山梔子を含むことによる長期服用時の腸間膜静脈硬化症など、注意すべき副作用もあります。
漢方薬は「自然のものだから安全」と考えるのではなく、医薬品として用法・用量や注意事項を守って使用することが大切です。
特に複数の漢方薬を併用する場合は、生薬の重複にも注意しましょう。

