駆虫薬とは
駆虫薬は、腸管内に寄生する寄生虫を駆除するために使用される医薬品です。
一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は、回虫と蟯虫(ぎょうちゅう)です。
条虫(いわゆるサナダムシ)や吸虫、鉤虫、旋毛虫、鞭虫などを駆除するための一般用医薬品はありません。これらが疑われる場合には、医療機関を受診して診療を受ける必要があります。
回虫と蟯虫の違い
| 寄生虫 | 主な特徴・症状 |
|---|---|
| 回虫 | 幼虫が体内を移動して肺に達することがあり、腹痛・下痢・栄養障害のほか、呼吸器症状を起こすことがある |
| 蟯虫 | 肛門周囲に産卵するため、肛門部のかゆみや、それに伴う不眠・神経症を起こすことがある |
回虫の感染と症状
回虫は、手指や食物に付着した虫卵が口から入ることで感染します。
孵化した幼虫は腸管壁から体組織に入り込み、体内を巡って肺に達した後、気道から再び消化管内へ入り、そこで成虫となります。
そのため、回虫感染では、腹痛、下痢、栄養障害などの消化器症状だけでなく、呼吸器などにも障害を起こすことがあります。
蟯虫の感染と症状
蟯虫も、手指や食物に付着した虫卵が口から入ることで感染します。
成虫が肛門から這い出して肛門周囲に産卵するため、肛門部に強いかゆみが生じることがあります。
特に夜間にかゆみが強くなりやすく、それによって不眠などを引き起こすことがあります。
駆虫薬が効くのは腸管内の虫体
駆虫薬は、基本的に腸管内に生息している虫体に作用します。
一方、虫卵には駆虫作用が及びません。
また、回虫では、腸管内以外に潜伏している幼虫にも駆虫作用が及びません。
そのため、一度駆虫薬を使用しただけでは完全に駆除できない場合があります。
再度駆虫するときは1か月以上あける
駆虫薬は虫卵には作用しないため、虫卵から孵化して成長し、腸管内の成虫となった頃に、あらためて駆虫する必要がある場合があります。
再度駆虫を必要とする場合には、1か月以上の間隔を置いてから使用します。
「効かなかったからすぐ追加で飲む」という使用方法は適切ではありません。
家族も感染している可能性がある
回虫や蟯虫は、手指や食物に付着した虫卵が口から入ることで感染します。
そのため、感染経路から考えると、衣食を共にする家族全員が感染している可能性があります。
保健所などで虫卵検査を受けて感染が確認された場合には、家族も一緒に駆虫を図ることが基本とされています。
駆虫薬を多く飲んでも効果は高まらない
駆虫薬は、一度に多く服用しても駆虫効果が高まるわけではありません。
反対に、過量に服用すると副作用が現れやすくなります。
そのため、定められた1日の服用回数や服用期間を守ることが重要です。
複数の駆虫薬を併用しない
複数の駆虫薬を同時に使用しても、駆虫効果が高まるわけではありません。
むしろ副作用が現れやすくなるほか、組み合わせによっては駆虫作用が弱くなることもあります。
そのため、複数の駆虫薬を自己判断で併用することは避けます。
駆虫薬は空腹時に使用するものが多い
駆虫薬は、駆虫成分が腸管内で作用することを目的とした局所作用を目的とする医薬品です。
駆虫成分が消化管から吸収されて全身に移行すると、頭痛、めまいなどの副作用を生じる原因となるため、吸収はできるだけ少ないことが望まれます。
食事をすると消化管内に内容物が入り、消化・吸収に伴って駆虫成分の吸収が高まることがあります。
そのため、駆虫薬には空腹時に使用することとされているものが多くあります。
瀉下薬を併用する場合の注意
駆虫した虫体や、腸管内に残留する駆虫成分を排出するため、瀉下薬(下剤)を併用することがあります。
しかし、瀉下薬であれば何でもよいわけではありません。
特にヒマシ油との併用は避ける必要があります。
ヒマシ油との併用を避ける理由
ヒマシ油を使用すると、腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり、副作用を生じる危険性が高まるためです。
駆虫薬とヒマシ油を併用してはいけないという点は、試験で狙われやすい重要ポイントです。
① サントニン
サントニンは、回虫の自発運動を抑える作用を示し、虫体を排便とともに体外へ排出させることを目的として用いられます。
サントニンは消化管から吸収された後、主として肝臓で代謝されます。
肝臓病の人は注意
肝臓病の診断を受けた人では、サントニンによる肝機能障害を悪化させるおそれがあります。
そのため、使用前に治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談することが重要です。
サントニンの副作用
サントニンでは、服用後に一時的に物が黄色く見える、耳鳴り、口渇などが現れることがあります。
特に「物が黄色く見える」という症状は、サントニンの重要な特徴として覚えておきましょう。
② カイニン酸
カイニン酸は、回虫に痙攣を起こさせる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられます。
カイニン酸を含む生薬成分として、マクリが配合されている場合があります。
日本薬局方収載のマクリは、煎薬として回虫の駆除に用いられます。
③ ピペラジンリン酸塩
ピペラジンリン酸塩は、アセチルコリンの伝達を妨げることによって、回虫や蟯虫の運動筋を麻痺させ、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられます。
ピペラジンリン酸塩の副作用
ピペラジンリン酸塩では、次のような副作用が現れることがあります。
- 痙攣
- 倦怠感
- 眠気
- 食欲不振
- 下痢
- 便秘
ピペラジンリン酸塩と基礎疾患
痙攣の症状がある人、貧血や著しい栄養障害の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがあります。
また、肝臓病、腎臓病の診断を受けた人では、吸収されて循環血液中に移行したピペラジンが体内に滞留し、副作用が生じやすくなるおそれがあります。
そのため、これらの人は使用前に医師または薬剤師へ相談することが重要です。
④ パモ酸ピルビニウム
パモ酸ピルビニウムは、蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えることによって殺虫作用を示すとされています。
パモ酸ピルビニウムは赤~赤褐色の成分です。
そのため、服用後に尿や糞便が赤色または赤褐色に着色することがあります。
これは成分の色によるもので、必ずしも血尿や血便を意味するものではありません。
パモ酸ピルビニウムと食事・飲酒
パモ酸ピルビニウムは水に溶けにくく、消化管からの吸収が少ないとされています。
一方、同じ理由から脂質分の多い食事やアルコールの摂取によって吸収が高まる可能性があるため、これらは避けることが重要です。
また、ヒマシ油との併用も避けます。
駆虫薬の服用時の重要ポイント
| ポイント | 重要事項 |
|---|---|
| 対象 | 一般用医薬品では回虫・蟯虫 |
| 回虫 | 幼虫が体内を移動して肺に達することがある |
| 蟯虫 | 肛門周囲に産卵し、かゆみ・不眠などを起こすことがある |
| 虫卵 | 駆虫薬は虫卵には作用しない |
| 再駆虫 | 必要な場合は1か月以上あける |
| 家族 | 感染が確認された場合、家族も一緒に駆虫を図ることが基本 |
| 過量 | 多く飲んでも効果は高まらず、副作用が増える |
| 複数併用 | 駆虫効果は高まらず、副作用が増えるおそれ |
| 服用時期 | 空腹時に使用するものが多い |
| ヒマシ油 | 駆虫成分の吸収が高まり、副作用リスクが増えるため併用しない |
| サントニン | 回虫の自発運動を抑制。黄色視、耳鳴り、口渇など |
| カイニン酸 | 回虫に痙攣を起こさせ、排便とともに排出 |
| ピペラジンリン酸塩 | 回虫・蟯虫の運動筋を麻痺。肝臓病・腎臓病などに注意 |
| パモ酸ピルビニウム | 蟯虫を殺虫。尿・糞便が赤~赤褐色になることがある |
ここは絶対に覚えたい!
駆虫薬では、まず「一般用医薬品の対象は回虫と蟯虫」と覚えましょう。
次に最重要なのが、「駆虫薬は虫卵には効かない」という点です。
そのため、再度駆虫する場合は1か月以上あける必要があります。
服用については、空腹時に使用するものが多い、過量服用しても効果は高まらない、複数の駆虫薬を併用しない、ヒマシ油と併用しないという4点を押さえましょう。
成分では、
サントニン → 回虫の自発運動を抑える・黄色視
カイニン酸 → 回虫に痙攣を起こさせる
ピペラジンリン酸塩 → 回虫・蟯虫の運動筋を麻痺
パモ酸ピルビニウム → 蟯虫を殺虫・尿や糞便が赤~赤褐色
という形で整理しておくと、正誤問題に対応しやすくなります。
予想問題
問1
一般用医薬品の駆虫薬は、回虫、蟯虫、条虫など、さまざまな腸管内寄生虫の駆除に使用できる。
解説
誤り。一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は、回虫と蟯虫です。条虫や吸虫、鉤虫、旋毛虫、鞭虫などを対象とする一般用医薬品はありません。
問2
駆虫薬は、腸管内の虫体だけでなく、虫卵にも作用する。
解説
誤り。駆虫薬は腸管内に生息する虫体に作用しますが、虫卵には駆虫作用が及びません。
問3
再度の駆虫が必要な場合には、前回の服用から1か月以上の間隔を置いて使用する。
解説
正しい。虫卵には駆虫作用が及ばず、成虫となった頃に改めて駆虫する必要があるため、再度駆虫する場合は1か月以上の間隔を置きます。
問4
駆虫薬は一度に多く服用するほど駆虫効果が高くなるため、決められた量を超えて服用してもよい。
解説
誤り。駆虫薬は、一度に多く服用しても駆虫効果が高まることはありません。むしろ副作用が現れやすくなるため、定められた用法・用量を守ります。
問5
駆虫薬を複数併用すれば、駆虫効果を高めることができる。
解説
誤り。複数の駆虫薬を併用しても駆虫効果が高まることはなく、副作用が現れやすくなるほか、組み合わせによっては駆虫作用が減弱することもあります。
問6
駆虫成分の腸管からの吸収を少なくするため、駆虫薬は空腹時に使用するものが多い。
解説
正しい。駆虫薬は腸管内での局所作用を目的とするため、消化管からの吸収はできるだけ少ないことが望まれます。食事によって吸収が高まることがあるため、空腹時に使用するものが多くあります。
問7
駆虫薬とヒマシ油を併用すると、駆虫成分の吸収が抑えられるため、副作用が起こりにくくなる。
解説
誤り。ヒマシ油を使用すると、腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり、副作用を生じる危険性が高まります。そのため、ヒマシ油との併用は避けます。
問8
サントニンを服用すると、一時的に物が黄色く見えることがある。
解説
正しい。サントニンでは、服用後に一時的に物が黄色く見えたり、耳鳴り、口渇などが現れたりすることがあります。
問9
パモ酸ピルビニウムを服用した後に尿や糞便が赤~赤褐色に着色することがある。
解説
正しい。パモ酸ピルビニウムは赤~赤褐色の成分であり、服用後に尿や糞便が赤色または赤褐色に着色することがあります。
問10
回虫や蟯虫の感染が確認された場合でも、家族は感染している可能性がないため、本人だけ駆虫すればよい。
解説
誤り。回虫や蟯虫は手指や食物に付着した虫卵が口から入ることで感染するため、衣食を共にする家族全員が感染している可能性があります。虫卵検査で感染が確認された場合には、家族も一緒に駆虫を図ることが基本です。
まとめ
駆虫薬は、腸管内の回虫や蟯虫を駆除するための医薬品です。
最大のポイントは、「虫卵には作用しない」ことです。そのため再度駆虫する場合は1か月以上の間隔を置きます。
また、過量服用しても効果は高まらない、複数の駆虫薬を併用しない、空腹時に使用するものが多い、ヒマシ油との併用を避けるという使用上の注意も重要です。
成分については、サントニン=黄色視、カイニン酸=回虫に痙攣、ピペラジンリン酸塩=回虫・蟯虫の運動筋を麻痺、パモ酸ピルビニウム=蟯虫を殺虫・尿や糞便が赤~赤褐色と整理しておきましょう。
さらに、回虫・蟯虫は家族内感染が起こりうるため、感染が確認された場合には家族も一緒に駆虫を図ることが基本です。

