鼻に用いる薬とは
鼻に用いる薬の代表的なものが、鼻炎用点鼻薬です。
鼻炎用点鼻薬は、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎による諸症状のうち、鼻づまり、鼻みず(鼻汁過多)、くしゃみ、頭重(頭が重い)の緩和を目的として、鼻腔内に適用する外用液剤です。
スプレー式で鼻腔内に噴霧するものが多く、鼻炎用内服薬とは異なり、鼻粘膜の充血を和らげるアドレナリン作動成分が主体となっています。([mhlw.go.jp](https://www.mhlw.go.jp/content/001692425.pdf))
急性鼻炎・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎の違い
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 急性鼻炎 | 鼻腔内に付着したウイルスや細菌によって起こる鼻粘膜の炎症。かぜの随伴症状として現れることが多い |
| アレルギー性鼻炎 | ハウスダストや花粉などのアレルゲンに対する過敏反応による鼻粘膜の炎症 |
| 副鼻腔炎 | 鼻粘膜の炎症が副鼻腔にも及んだもの |
| 蓄膿症 | 慢性の副鼻腔炎の一般的な呼び方 |
花粉などが原因となるアレルギー性鼻炎は、一般に花粉症と呼ばれます。
鼻炎用点鼻薬の特徴
鼻炎用点鼻薬は、鼻腔内に直接適用する局所作用を目的とした外用薬です。
主としてアドレナリン作動成分が配合され、鼻粘膜の血管を収縮させることで、鼻粘膜の充血や腫れを和らげ、鼻づまりを改善します。
抗ヒスタミン成分や抗炎症成分が組み合わせて配合される場合もありますが、それらも鼻腔内における局所的な作用を目的としています。
スプレー式点鼻薬の正しい使い方
スプレー式の鼻炎用点鼻薬では、使用時の衛生管理が重要です。
噴霧後に鼻汁とともに薬液が逆流する場合があります。そのため、使用前に鼻をよくかんでおくようにします。
使用後は、鼻に接した部分を清潔なティッシュペーパー等で拭き、必ずキャップを閉めた状態で保管して、清潔に保ちます。
また、汚染を防ぐため、容器をなるべく直接鼻に触れないようにすることも重要です。
さらに、点鼻薬を他人と共有してはいけません。 ([mhlw.go.jp](https://www.mhlw.go.jp/content/001692425.pdf))
アドレナリン作動成分
アドレナリン作動成分は、交感神経系を刺激して、鼻粘膜を通っている血管を収縮させます。
その結果、鼻粘膜の充血や腫れを和らげ、鼻づまりを改善します。
代表的な成分には、次のものがあります。
| 成分 | 主な作用 |
|---|---|
| ナファゾリン塩酸塩 | 鼻粘膜の血管を収縮させ、充血や腫れを緩和 |
| フェニレフリン塩酸塩 | 鼻粘膜の血管を収縮させ、充血や腫れを緩和 |
| テトラヒドロゾリン塩酸塩 | 鼻粘膜の血管を収縮させ、充血や腫れを緩和 |
点鼻薬の使いすぎに注意
アドレナリン作動成分が配合された点鼻薬は、過度に使用すると逆に鼻づまりを悪化させることがあります。
過度の使用によって鼻粘膜の血管が反応しにくくなり、逆に血管が拡張して二次充血を起こすためです。
その結果、鼻づまり(鼻閉)がさらにひどくなりやすくなります。
「鼻づまりが治らないから何度も点鼻する」という使い方は避ける必要があります。
局所作用でも全身作用に注意
点鼻薬は鼻腔内に使用する外用薬ですが、成分が鼻粘膜を通っている血管から吸収され、循環血液中に入りやすいことがあります。
そのため、局所に使用する薬であっても、アドレナリン作動成分による全身的な影響が生じることがあります。
抗ヒスタミン成分
アレルギー性鼻炎では、体内の伝達物質であるヒスタミンが関与しています。
急性鼻炎の場合も、鼻粘膜が刺激に対して敏感になることで、肥満細胞からヒスタミンが遊離して、くしゃみや鼻汁などの症状が生じやすくなります。
このヒスタミンの働きを抑える目的で、点鼻薬に抗ヒスタミン成分が配合されることがあります。
代表的な成分として、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩などがあります。
ヒスタミンの遊離を抑える成分
クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンが遊離するのを抑える作用を示す成分です。
花粉やハウスダストなどによる鼻アレルギー症状の緩和を目的として、通常は抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合されます。
クロモグリク酸ナトリウムの重要ポイント
クロモグリク酸ナトリウムはアレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎には無効です。
そのため、アレルギーによる症状なのか、ほかの原因による症状なのかがはっきりしない場合には、使用前に専門家へ相談するなど、慎重に判断する必要があります。
3日間使用しても症状の改善がみられない場合には、アレルギー以外の原因である可能性があります。
また、医療機関で減感作療法等のアレルギー治療を受けている人では、その治療の妨げとなるおそれがあります。使用前に医師又は薬剤師へ相談する必要があります。
まれに重篤な副作用としてアナフィラキシーが起こることがあります。
その他の副作用として、鼻出血や頭痛が現れることがあります。
症状が改善しても、2週間を超えて使用した場合の有効性・安全性に関する科学的データは限られています。使用の適否について専門家に相談しながら慎重に判断する必要があります。([mhlw.go.jp](https://www.mhlw.go.jp/content/001692425.pdf))
局所麻酔成分
鼻粘膜の過敏性や痛み、痒みを抑える目的で、リドカイン、リドカイン塩酸塩などの局所麻酔成分が配合されることがあります。
殺菌消毒成分
鼻粘膜を清潔に保ち、細菌による二次感染を防止する目的で、殺菌消毒成分が配合されることがあります。
代表的な成分には、
- ベンザルコニウム塩化物
- ベンゼトニウム塩化物
- セチルピリジニウム塩化物
があります。
これらはいずれも陽性界面活性成分で、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、カンジダなどの真菌類に対して殺菌消毒作用を示します。
一方、結核菌やウイルスには効果がありません。
抗炎症成分
鼻粘膜の炎症を和らげる目的で、グリチルリチン酸二カリウムが配合される場合があります。
また、ステロイド性抗炎症成分を含有する点鼻薬もあります。
ステロイド性抗炎症成分を含む製品では、長期連用を避ける必要があります。
鼻炎用点鼻薬の相互作用
鼻炎用点鼻薬の成分は、ほかの医薬品にも配合されている場合があります。
特にアドレナリン作動成分は、
- 鎮咳去痰薬の気管支拡張成分
- 外用痔疾用薬の止血成分
- 点眼薬の結膜充血を取り除く成分
などとして用いられる場合があります。
そのため、これらを併用すると同種の作用を有する成分が重複し、効き目が強すぎたり、副作用が現れやすくなったりするおそれがあります。
抗ヒスタミン成分との重複にも注意
抗ヒスタミン成分は、かぜ薬の鼻汁止めや、睡眠改善薬、乗物酔い防止薬などにも配合されます。
鼻炎用点鼻薬をこれらの医薬品と併用する場合には、同種の作用を有する成分の重複に注意します。
鼻炎用点鼻薬の受診勧奨
一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬が対応できる範囲は、急性又はアレルギー性の鼻炎及びそれに伴う副鼻腔炎です。
蓄膿症などの慢性のものは、一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の対象ではありません。
鼻炎用点鼻薬には症状を緩和する働きがありますが、原因そのものを取り除くわけではありません。
3日位で改善しなければ受診
鼻炎用点鼻薬は長期連用を避けることとされており、3日位使用しても症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を継続せず、医療機関(耳鼻科)を受診するなどの対応が必要です。
副鼻腔炎や中耳炎にも注意
かぜ症候群などに伴う鼻炎症状では、鼻炎が長く続くことで副鼻腔炎や中耳炎につながることがあります。
そのような症状の徴候にも注意し、中耳炎が発生した場合などには医療機関を受診するよう勧める必要があります。
鼻茸(ポリープ)
鼻粘膜が腫れてポリープ(鼻茸)となっている場合には、一般用医薬品によって対処することは適当ではありません。
医療機関における治療が必要となります。
鼻炎用点鼻薬で覚えたい数字
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 3日間 | クロモグリク酸ナトリウムを使用しても改善しない場合、アレルギー以外の原因の可能性 |
| 2週間 | クロモグリク酸ナトリウムは2週間を超えて使用した場合の有効性・安全性の科学的データが限られる |
| 3日位 | 一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬を使用しても改善しない場合、漫然と継続せず受診 |
「クロモグリク酸ナトリウム=3日・2週間」、「鼻炎用点鼻薬=3日位」と区別して覚えましょう。
重要ポイントまとめ
| 項目 | 覚えるポイント |
|---|---|
| 急性鼻炎 | ウイルス・細菌による鼻粘膜の炎症。かぜの随伴症状として多い |
| アレルギー性鼻炎 | ハウスダストや花粉などのアレルゲンによる過敏反応 |
| 副鼻腔炎 | 鼻粘膜の炎症が副鼻腔にも及んだもの |
| 鼻炎用点鼻薬 | 鼻づまり、鼻みず、くしゃみ、頭重などを緩和 |
| アドレナリン作動成分 | 鼻粘膜の血管を収縮させ、充血や腫れを和らげる |
| 使いすぎ | 二次充血により鼻づまりが悪化することがある |
| 抗ヒスタミン | ヒスタミンの働きを抑える |
| クロモグリク酸ナトリウム | ヒスタミンの遊離を抑える。アレルギー性鼻炎に用いる |
| クロモグリク酸ナトリウム | アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎には無効 |
| 殺菌消毒成分 | 黄色ブドウ球菌・溶血性連鎖球菌・カンジダ等に作用。結核菌・ウイルスには無効 |
| 衛生管理 | 使用前に鼻をかむ、使用後に噴霧口を清潔にする、他人と共有しない |
| 慢性疾患 | 蓄膿症などの慢性のものは一般用点鼻薬の対象ではない |
| 受診 | 3日位使用しても改善しなければ受診 |
| 鼻茸 | 一般用医薬品での対処は適当でなく、医療機関での治療が必要 |
ここは絶対に覚えたい!
鼻炎用点鼻薬の中心 → アドレナリン作動成分
アドレナリン作動成分 → 鼻粘膜の血管収縮 → 鼻づまり改善
点鼻薬の使いすぎ → 二次充血 → 鼻づまり悪化
クロモグリク酸ナトリウム → ヒスタミン遊離抑制 → アレルギー性鼻炎
クロモグリク酸ナトリウム → アレルギー性でない鼻炎・副鼻腔炎には無効
殺菌消毒成分 → 結核菌・ウイルスには効果なし
点鼻薬でも成分が吸収され、全身作用が生じることがある
鼻炎用点鼻薬 → 3日位で改善しなければ受診
蓄膿症など慢性のもの → 一般用点鼻薬の対象外
鼻茸 → 医療機関での治療が必要
予想問題
問1
鼻炎用点鼻薬は、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎による鼻づまり、鼻みず、くしゃみ、頭重などの緩和に用いられる。
解説
正しい。鼻炎用点鼻薬は、これらの諸症状を緩和する目的で鼻腔内に適用されます。
問2
鼻炎用点鼻薬では、アドレナリン作動成分が鼻粘膜の血管を拡張させることで鼻づまりを改善する。
解説
誤り。アドレナリン作動成分は、鼻粘膜の血管を収縮させることで充血や腫れを和らげます。
問3
アドレナリン作動成分が配合された点鼻薬を過度に使用すると、二次充血によって鼻づまりが悪化することがある。
解説
正しい。過度に使用すると鼻粘膜の血管が反応しなくなり、逆に血管が拡張して二次充血を招き、鼻づまりがひどくなりやすくなります。
問4
点鼻薬は鼻腔内だけに作用するため、成分が循環血液中に入り全身的な影響を及ぼすことはない。
解説
誤り。点鼻薬の成分は鼻粘膜を通っている血管から吸収され、循環血液中に入りやすく、全身的な影響を生じることがあります。
問5
クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からのヒスタミンの遊離を抑え、花粉やハウスダストなどによる鼻アレルギー症状の緩和に用いられる。
解説
正しい。クロモグリク酸ナトリウムはヒスタミンの遊離を抑える抗アレルギー成分です。
問6
クロモグリク酸ナトリウムは、アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎にも有効である。
解説
誤り。クロモグリク酸ナトリウムは、アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎には無効です。
問7
鼻炎用点鼻薬に配合されるベンザルコニウム塩化物などは、結核菌やウイルスにも効果を示す。
解説
誤り。これらの殺菌消毒成分は、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、カンジダなどの真菌類に対する殺菌消毒作用を示しますが、結核菌やウイルスには効果がありません。
問8
スプレー式点鼻薬は、使用後に鼻に接した部分を清潔なティッシュペーパー等で拭き、他人との共用を避ける。
解説
正しい。汚染を防ぐため、使用後は噴霧口を清潔にし、容器を直接鼻に触れないようにするとともに、他人と共有しないことが重要です。
問9
一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬は、蓄膿症などの慢性鼻炎にも長期間使用してよい。
解説
誤り。一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の対応範囲は急性又はアレルギー性の鼻炎及びそれに伴う副鼻腔炎であり、蓄膿症などの慢性のものは対象となっていません。
問10
鼻炎用点鼻薬を3日位使用しても症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を続けず、医療機関を受診するなどの対応が必要である。
解説
正しい。鼻炎用点鼻薬は長期連用を避けることとされており、3日位使用しても改善しない場合には耳鼻科などの医療機関を受診することが重要です。
まとめ
鼻に用いる薬では、まず「鼻炎用点鼻薬=鼻粘膜に直接使う外用薬」という基本を押さえましょう。
最重要成分はアドレナリン作動成分で、鼻粘膜の血管を収縮させて鼻づまりを改善します。ただし、使いすぎると二次充血によって逆に鼻づまりが悪化することがあります。
また、クロモグリク酸ナトリウムはアレルギー性鼻炎に用いるが、アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎には無効という点も重要です。
受診勧奨では、一般用点鼻薬は慢性の蓄膿症などを対象としないこと、3日位使用しても改善しなければ受診すること、鼻茸(ポリープ)は医療機関で治療することを覚えておきましょう。

