胃痛や胸やけ、胃酸が多いような不快感があるとき、市販の胃薬を探していると「制酸成分」という言葉を目にすることがあります。
制酸成分は、胃の中にある胃酸を中和し、胃酸による症状を改善する目的で配合される成分です。
市販の胃薬には、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイトなど、さまざまな制酸成分が使われています。
ただし、制酸成分には複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。また、胃酸の分泌そのものを抑える成分とは作用の仕組みも違います。
この記事では、制酸成分の基本的な働きや代表的な種類、市販薬を選ぶときのポイント、使用上の注意点について解説します。
制酸成分とは?
制酸成分とは、胃の中にある胃酸を中和することを目的とした成分です。
胃酸には、食べ物の消化を助けたり、胃の中の環境を保ったりする働きがあります。一方、胃酸が食道側へ逆流したり、胃酸が関係する症状が起こったりすると、胸やけや胃の不快感などにつながることがあります。
制酸成分は、胃の中にすでに存在する胃酸を中和することで、胃酸による症状を改善します。
ただし、制酸成分は胃酸の分泌そのものを止める成分ではありません。
胃酸が分泌される仕組みに作用する薬とは、働き方が異なります。
制酸成分と胃酸分泌抑制成分の違い
胃酸に関係する市販薬には、制酸成分のほかに、胃酸の分泌を抑える成分もあります。
主な違いは次のとおりです。
| 種類 | 主な働き |
|---|---|
| 制酸成分 | 胃の中にある胃酸を中和する |
| 胃酸分泌抑制成分 | 胃酸が分泌される仕組みに作用し、分泌を抑える |
| 胃粘膜保護成分 | 胃粘膜を保護するなど、胃への刺激を軽減する目的で使われる |
このように、いずれも胃酸に関係する症状に用いられることがありますが、作用の仕組みは異なります。
胃酸分泌抑制薬との違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
胃酸を抑える胃薬の違い|H2ブロッカー・PPI・制酸薬を比較
代表的な制酸成分の種類
市販の胃薬には、さまざまな制酸成分が配合されています。
代表的なものとして、次の成分が挙げられます。
- 炭酸水素ナトリウム
- 炭酸カルシウム
- 炭酸マグネシウム
- 酸化マグネシウム
- 合成ヒドロタルサイト
- メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
- 合成ケイ酸アルミニウム
これらは同じ制酸成分でも、化学的な性質や製品中での配合量、ほかの成分との組み合わせが異なります。
成分ごとの特徴を確認していきましょう。
1.炭酸水素ナトリウム
炭酸水素ナトリウムは、胃酸を中和する目的で使用される成分です。重曹とも呼ばれています。
市販の胃腸薬に配合されており、ほかの制酸成分などと組み合わせて使われることもあります。
炭酸水素ナトリウムを含む市販薬を選ぶときには、製品に記載された効能・効果だけでなく、ナトリウムを含むことにも注意が必要です。
ナトリウムの摂取制限を受けている方や、腎臓・心臓などに関する病気で治療中の方は、使用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
また、成分名だけで製品の効果や適否を判断せず、配合されているほかの成分も確認しましょう。
2.炭酸カルシウム
炭酸カルシウムも、胃酸を中和する目的で使われる制酸成分の一つです。
市販の胃腸薬では、単独ではなく、ほかの制酸成分や消化成分などと組み合わせて配合されることがあります。
例えば、第一三共ヘルスケアの「第一三共胃腸薬プラス錠剤」には、沈降炭酸カルシウムが制酸成分として配合されています。
ただし、炭酸カルシウムが含まれているからといって、すべての胃の不調に適しているわけではありません。
商品の効能・効果や使用上の注意を確認して選ぶことが大切です。
3.炭酸マグネシウム
炭酸マグネシウムは、胃酸を中和する目的で使われるマグネシウム系の制酸成分です。
市販の胃薬では、ほかの制酸成分や健胃成分などと組み合わせて配合される場合があります。
マグネシウムを含む薬は、腎機能が低下している方などでは注意が必要になることがあります。
腎臓の病気で治療中の方や、ほかの薬を使用している方は、自己判断で使用せず、事前に医師や薬剤師などに相談してください。
4.酸化マグネシウム
酸化マグネシウムは、胃酸を中和する作用を持つ成分です。
市販薬では胃酸に関係する症状に用いられるほか、製品によっては便秘に使用される薬にも配合されています。
ただし、同じ酸化マグネシウムを含む薬であっても、製品によって効能・効果や用法・用量は異なります。
胃薬として販売されている製品と、便秘薬として販売されている製品を、成分名だけを見て同じように使うことはできません。
特に、腎機能が低下している方や、高齢の方、長期間使用する方などは、マグネシウムの蓄積による高マグネシウム血症に注意が必要です。
吐き気、嘔吐、強い眠気、筋力低下など、普段と異なる症状が現れた場合は、使用を中止して医療機関に相談してください。
5.合成ヒドロタルサイト
合成ヒドロタルサイトは、胃酸を中和する作用を持つ制酸成分です。
市販の胃腸薬に配合されており、ほかの制酸成分などと組み合わせて使われる場合があります。
例えば、第一三共ヘルスケアの「第一三共胃腸薬プラス錠剤」にも、合成ヒドロタルサイトが配合されています。
製品によっては、複数の制酸成分を組み合わせることで、胃酸に関係する症状を改善するよう設計されています。
そのため、合成ヒドロタルサイトだけでなく、商品全体の成分構成を確認することが重要です。
6.メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、胃酸を中和する作用を持つ成分です。
胃酸の中和に加え、胃粘膜を保護する作用もあるとされています。
市販の胃腸薬に配合されており、製品によっては、ほかの制酸成分などと組み合わせて使われています。
ただし、アルミニウムやマグネシウムを含む成分を使用する場合は、腎機能などに関する注意が必要になることがあります。
腎臓の病気で治療中の方や、ほかの薬を使用している方は、購入前に薬剤師などに相談してください。
7.合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウムも、市販の胃腸薬に使われる制酸成分の一つです。
例えば、太田胃散には、炭酸水素ナトリウムや沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどとともに、合成ケイ酸アルミニウムが配合されています。
このように、市販の胃腸薬には複数の制酸成分が組み合わされているものがあります。
ただし、商品によって配合成分や配合量が異なるため、商品名だけで判断せず、成分表示を確認しましょう。
制酸成分を含む市販薬の例
制酸成分は、単独の成分としてではなく、複数の成分を組み合わせた市販の胃腸薬に配合されていることもあります。
ここでは、制酸成分が配合されている代表的な市販薬を紹介します。
太田胃散
太田胃散は、制酸剤のほか、健胃生薬や消化酵素を配合した胃腸薬です。
メーカー公式情報では、制酸剤として、炭酸水素ナトリウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムが記載されています。
また、健胃生薬や消化酵素も配合されています。
胃酸に関係する症状だけでなく、製品に記載された効能・効果の範囲で、胃もたれや食べ過ぎなどにも使用される胃腸薬です。
ただし、制酸成分だけを目的とした製品ではありません。商品を選ぶ際には、配合されている成分と効能・効果を確認してください。
商品情報はメーカー公式サイトで確認できます。
第一三共胃腸薬プラス錠剤
第一三共胃腸薬プラス錠剤は、制酸成分のほか、消化酵素、健胃生薬、整腸成分などを配合した胃腸薬です。
メーカー公式情報では、制酸成分として、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムが記載されています。
そのほか、消化酵素や有胞子性乳酸菌なども配合されています。
制酸成分だけでなく、複数の成分を組み合わせた胃腸薬を検討したい場合に、成分構成を比較する際の参考になります。
ただし、太田胃散とは配合成分や製品の設計が異なります。どちらが適しているかは、症状や商品の効能・効果、使用上の注意を確認して判断しましょう。
商品情報はメーカー公式サイトで確認できます。
制酸成分を含む胃薬はどう選ぶ?
制酸成分を含む胃薬を選ぶときは、成分名だけで判断するのではなく、現在の症状や商品の効能・効果を確認することが大切です。
胃酸による胸やけや不快感が気になる場合
胃酸が関係する胸やけや胃の不快感などには、制酸成分を含む市販薬が選択肢になることがあります。
ただし、胸やけの原因は胃酸の中和だけで対応できるものとは限りません。
症状が頻繁に起こる場合や、長く続く場合は、自己判断で市販薬を使い続けず、医療機関への相談を検討してください。
胃もたれや食べ過ぎが気になる場合
胃もたれや食べ過ぎによる不快感には、制酸成分だけでなく、健胃成分や消化酵素などを組み合わせた胃腸薬もあります。
ただし、胃もたれは必ずしも胃酸が多いことだけで起こるわけではありません。
消化を助けることを目的とした成分や、胃の働きを整えることを目的とした成分が配合されている製品もあるため、症状に合わせて効能・効果を確認しましょう。
胃もたれに使われる市販薬については、こちらの記事でも解説しています。
胃もたれに使われる市販薬の選び方|健胃薬・消化薬・胃腸薬の違い
胃痛が気になる場合
胃痛がある場合も、原因によって適した対応は異なります。
胃酸が関係している場合は制酸成分などが選択肢になることがありますが、胃痛の原因を症状だけで判断することはできません。
痛みが強い場合や、何度も繰り返す場合、長く続く場合には、市販薬だけで対応し続けないようにしましょう。
胃痛に使われる市販薬の選び方については、こちらの記事も参考にしてください。
胃痛に使われる市販薬の選び方|キリキリ・シクシクする胃痛と薬の違い
制酸成分を含む胃薬を使用するときの注意点
制酸成分を含む胃薬を使用する際には、次の点に注意してください。
1.ほかの薬との飲み合わせを確認する
制酸成分の種類によっては、ほかの薬の吸収などに影響する場合があります。
現在、処方薬や市販薬を使用している方は、購入前に薬剤師などに相談してください。
特に、複数の胃薬を自己判断で併用することは避けましょう。
2.腎臓の病気がある場合は事前に相談する
マグネシウムやアルミニウムを含む制酸成分などは、腎機能が低下している方では注意が必要になることがあります。
腎臓の病気で治療中の方や、医師から食事や薬について指示を受けている方は、使用前に医師や薬剤師に相談してください。
3.ナトリウムの摂取制限がある場合は確認する
炭酸水素ナトリウムを含む製品などは、ナトリウムの摂取制限を受けている方では注意が必要になることがあります。
高血圧や心臓・腎臓の病気などで食事制限を受けている方は、自己判断で使用せず、医師や薬剤師などに確認してください。
4.症状が続く場合は市販薬を使い続けない
制酸成分を含む胃薬は、すべての胃の不調の原因を治療するものではありません。
使用しても症状が改善しない場合や、症状を繰り返す場合には、医療機関への相談を検討してください。
また、強い痛みや吐血、黒い便、意図しない体重減少などがある場合は、市販薬だけで対応せず、速やかに医療機関を受診してください。
制酸成分についてよくある質問
制酸成分は胃酸を抑える成分ですか?
制酸成分は、胃酸の分泌そのものを抑えるのではなく、胃の中にある胃酸を中和する成分です。
胃酸の分泌を抑える成分とは、作用の仕組みが異なります。
制酸成分が入っていれば、どの胃薬を選んでも同じですか?
同じではありません。
制酸成分には複数の種類があり、商品によって配合成分や配合量、効能・効果が異なります。また、制酸成分以外に、健胃成分や消化酵素などが配合されている製品もあります。
成分名だけで判断せず、商品の表示を確認して選びましょう。
制酸成分と胃粘膜保護成分は同じですか?
同じではありません。
制酸成分は胃酸を中和することを目的とする一方、胃粘膜保護成分は胃粘膜を保護することなどを目的としています。
ただし、成分によっては複数の働きを持つものもあるため、製品の説明や添付文書を確認することが大切です。
制酸成分を含む胃薬は長期間使ってもよいですか?
製品によって使用上の注意が異なるため、一律に長期間使用できるとはいえません。
商品の添付文書に記載された用法・用量や使用上の注意を守り、症状が続く場合や繰り返す場合は、医療機関に相談してください。
まとめ
制酸成分は、胃の中にある胃酸を中和することを目的とした成分です。
市販の胃薬には、次のような制酸成分が使われています。
- 炭酸水素ナトリウム
- 炭酸カルシウム
- 炭酸マグネシウム
- 酸化マグネシウム
- 合成ヒドロタルサイト
- メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
- 合成ケイ酸アルミニウム
制酸成分は、胃酸の分泌を抑える成分とは作用の仕組みが異なります。また、市販の胃腸薬には複数の制酸成分や、健胃成分、消化酵素などが組み合わされている製品もあります。
そのため、成分名だけで判断するのではなく、現在の症状や商品の効能・効果、使用上の注意を確認して選ぶことが大切です。
症状が改善しない場合や、繰り返し起こる場合、強い痛みなどがある場合は、市販薬だけで対応し続けず、医療機関や薬剤師などに相談しましょう。

