その他の泌尿器用薬とは
その他の泌尿器用薬には、尿路の殺菌・消毒を目的とするものや、尿量を増やして排尿を促すものなどがあります。
一般用医薬品では、残尿感、排尿時の不快感、尿量減少などの症状に対して用いられる生薬製剤や漢方処方製剤があります。
この分野では、特にウワウルシ、カゴソウ、キササゲ、サンキライ、ソウハクヒ、モクツウなどの生薬と、牛車腎気丸、八味地黄丸、六味丸、猪苓湯、五淋散などの漢方処方製剤について整理しておきましょう。
なお、尿の異常には重大な疾患が隠れている場合もあるため、症状が続く場合の受診勧奨も重要です。
① 尿路消毒成分
尿路の殺菌・消毒を目的として、ウワウルシが用いられることがあります。
ウワウルシ
ウワウルシは、ツツジ科のクマコケモモの葉を基原とする生薬です。
利尿作用のほか、経口摂取後に尿中へ排出される分解代謝物が抗菌作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられます。
日本薬局方収載のウワウルシは、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられます。
② 利尿成分
利尿作用を期待して、さまざまな生薬成分が配合される場合があります。
- カゴソウ
- キササゲ
- サンキライ
- ソウハクヒ
- モクツウ
- ブクリョウ
カゴソウ
カゴソウは、シソ科のウツボグサの花穂を基原とする生薬です。
日本薬局方収載のカゴソウは、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられます。
キササゲ
キササゲは、ノウゼンカズラ科のキササゲ等の果実を基原とする生薬です。
利尿作用を期待して用いられ、日本薬局方収載のキササゲは、煎薬として尿量減少に用いられます。
サンキライ
サンキライは、ユリ科のSmilax glabra Roxburghの塊茎を基原とする生薬です。
利尿作用を期待して用いられます。
日本薬局方収載のサンキライは、煎薬として尿量減少に用いられます。
ソウハクヒ
ソウハクヒは、クワ科のマグワの根皮を基原とする生薬です。
利尿作用を期待して用いられ、日本薬局方収載のソウハクヒは、煎薬として尿量減少に用いられます。
モクツウ
モクツウは、アケビ科のアケビまたはミツバアケビの蔓性の茎を、通常、横切りしたものを基原とする生薬です。
利尿作用を期待して用いられます。
ブクリョウ
ブクリョウは、サルノコシカケ科のマツホドの菌核を基原とする生薬です。
利尿作用を期待して用いられる代表的な生薬であり、漢方処方製剤にも広く配合されています。
利尿成分を含む医薬品の注意点
利尿作用によって尿量が増えるため、使用中は脱水や電解質バランスにも注意する必要があります。
特に高齢者や体力の低下している人では、体調の変化に注意し、漫然と使用しないことが重要です。
また、尿量の減少や排尿異常には、腎臓や尿路などの疾患が隠れている可能性があります。
③ 漢方処方製剤
その他の泌尿器用薬には、排尿異常やむくみ、冷えなどに対して用いられる漢方処方製剤があります。
これらは症状だけでなく、体力、冷え、尿量、むくみなどの体質・症状を考慮して使い分けられます。
また、いずれも比較的長期間、1か月程度使用されることがあるため、漢方処方製剤に共通する注意点も重要です。
④ 牛車腎気丸
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、体力中等度以下で、疲れやすく、四肢が冷えやすく、尿量が減少し、むくみがあり、ときに下半身に痛みやしびれがあるものの、下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみなどに用いられる漢方処方製剤です。
「冷え・尿量減少・むくみ」が大きなポイントです。
牛車腎気丸の使用時の注意
牛車腎気丸には附子(ブシ)が含まれます。
そのため、附子を含む漢方処方製剤に共通する注意点を理解しておくことが重要です。
体質や使用状況によっては、動悸、のぼせ、舌のしびれ、悪心などが現れることがあります。
⑤ 八味地黄丸
八味地黄丸(はちみじおうがん)は、体力中等度以下で、疲れやすく、手足が冷えやすく、尿量が減少し、夜間頻尿などがみられるものの、排尿困難、残尿感、頻尿、軽い尿漏れ、むくみ、かゆみなどに用いられます。
高齢者にみられる排尿異常や、冷えを伴う症状などが重要です。
八味地黄丸にも附子が含まれます。
⑥ 六味丸
六味丸(ろくみがん)は、体力中等度以下で、疲れやすく、腰や下肢に力がなく、尿量が減少したり、反対に頻尿となったりするものの、排尿困難、残尿感、頻尿、むくみなどに用いられます。
八味地黄丸と似ていますが、八味地黄丸には附子が含まれ、六味丸には附子が含まれないことが重要です。
⑦ 猪苓湯
猪苓湯(ちょれいとう)は、体力中等度を目安として、尿が出にくい、排尿痛、残尿感などがあるものの、排尿困難、排尿痛、残尿感などに用いられます。
尿路の炎症や排尿異常に対して使用される代表的な漢方処方製剤です。
牛車腎気丸や八味地黄丸などと比較すると、冷えや虚弱を中心とした処方ではなく、排尿時の痛みなどを伴う尿路症状がポイントになります。
⑧ 五淋散
五淋散(ごりんさん)は、体力中等度の人で、排尿異常や排尿時の不快感などがあるものに用いられる漢方処方製剤です。
特に排尿痛、残尿感、尿の混濁などの尿路症状を伴う場合に用いられます。
牛車腎気丸・八味地黄丸・六味丸の違い
| 処方 | 覚えるポイント |
|---|---|
| 牛車腎気丸 | 冷え、尿量減少、むくみ、下半身の痛み・しびれ。附子を含む |
| 八味地黄丸 | 冷え、疲れやすい、尿量減少、夜間頻尿など。附子を含む |
| 六味丸 | 腰・下肢の力がない、尿量減少または頻尿など。附子を含まない |
「八味地黄丸と牛車腎気丸は附子を含む、六味丸は含まない」という違いは、試験対策として非常に重要です。
その他の泌尿器用薬の副作用
漢方処方製剤では、使用する人の体質や症状に合わない場合、副作用が現れやすくなることがあります。
特に、胃腸が弱い人、体力が低下している人などでは、処方によっては食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐などが現れることがあります。
「漢方だから副作用がない」と考えず、症状や体質に合った使用が重要です。
カンゾウを含む漢方処方製剤に注意
泌尿器用薬として用いられる漢方処方製剤には、カンゾウを含むものがあります。
カンゾウを含む医薬品を複数使用すると、グリチルリチン酸の摂取量が増えることがあります。
長期にわたる過量摂取では、偽アルドステロン症を生じるおそれがあるため、他のカンゾウ含有製品との併用に注意します。
排尿症状がある場合の受診勧奨
排尿時の痛みや残尿感、頻尿などは、膀胱炎などの尿路感染症によって生じることがあります。
しかし、排尿症状が長期間続く場合や、症状を繰り返す場合には、感染症だけでなく尿路結石、前立腺疾患、腎臓疾患などが原因となっている可能性もあります。
そのため、一般用医薬品を漫然と使用し続けず、症状が改善しない場合は医療機関を受診することが重要です。
血尿がある場合
血尿がみられる場合には、一般用医薬品による自己治療を続けるのではなく、医療機関を受診する必要があります。
血尿は、尿路感染症だけでなく、尿路結石や腎臓・膀胱などの重大な疾患でも生じる可能性があります。
発熱を伴う排尿症状
排尿時の不快感などに発熱や腰痛、背中の痛みなどを伴う場合には、腎盂腎炎などの感染症が疑われることがあります。
このような場合には、一般用医薬品だけで対処せず、早めに医療機関を受診することが重要です。
試験で狙われやすいポイント
| 項目 | 重要ポイント |
|---|---|
| ウワウルシ | 利尿+尿中代謝物による抗菌作用。残尿感・排尿時不快感 |
| カゴソウ | 利尿。残尿感・排尿時不快感 |
| キササゲ | 利尿。尿量減少 |
| サンキライ | 利尿。尿量減少 |
| ソウハクヒ | 利尿。尿量減少 |
| モクツウ | 利尿 |
| 牛車腎気丸 | 冷え、尿量減少、むくみ、下半身の痛み・しびれ。附子を含む |
| 八味地黄丸 | 冷え、疲れやすい、尿量減少、夜間頻尿など。附子を含む |
| 六味丸 | 腰・下肢の力がない、尿量減少または頻尿など。附子を含まない |
| 猪苓湯 | 排尿時の痛み、排尿困難、残尿感など |
| 五淋散 | 排尿異常、排尿時不快感などの尿路症状 |
| カンゾウ | 重複・長期の過量摂取で偽アルドステロン症に注意 |
| 血尿 | 自己治療を続けず受診 |
| 発熱+排尿症状 | 腎盂腎炎などを考えて受診 |
ここは絶対に覚えたい!
その他の泌尿器用薬では、まず「ウワウルシ=尿路消毒」「その他の生薬=利尿」と大きく整理しましょう。
ウワウルシは、単なる利尿薬ではなく、尿中に排出された分解代謝物が抗菌作用を示す点が重要です。
漢方では、
牛車腎気丸 → 冷え・尿量減少・むくみ・下半身の痛みやしびれ・附子
八味地黄丸 → 冷え・疲れやすい・尿量減少・夜間頻尿・附子
六味丸 → 八味地黄丸に似るが附子を含まない
猪苓湯・五淋散 → 排尿時の痛みや不快感など尿路症状
という形で整理します。
そして、血尿、発熱を伴う排尿症状、症状の長期化・反復では、一般用医薬品だけで対処し続けず、医療機関への受診につなげます。
予想問題
問1
ウワウルシは利尿作用のほか、経口摂取後に尿中へ排出される分解代謝物が抗菌作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられる。
解説
正しい。ウワウルシは利尿作用に加え、尿中へ排出される分解代謝物による抗菌作用によって、尿路の殺菌消毒効果が期待されます。
問2
カゴソウ、キササゲ、サンキライ、ソウハクヒなどは、利尿作用を期待して用いられる生薬である。
解説
正しい。これらはいずれも利尿作用を期待して配合される生薬です。
問3
牛車腎気丸と八味地黄丸には附子が含まれるが、六味丸には附子が含まれない。
解説
正しい。牛車腎気丸と八味地黄丸には附子が含まれます。一方、六味丸には附子が含まれません。
問4
牛車腎気丸は、冷え、尿量減少、むくみなどを伴う人には用いられない。
解説
誤り。牛車腎気丸は、体力中等度以下で、疲れやすく、四肢が冷えやすく、尿量が減少し、むくみがある人などに用いられます。
問5
六味丸は、牛車腎気丸と同様に附子を含むため、附子による注意点も同じである。
解説
誤り。六味丸には附子が含まれていません。牛車腎気丸や八味地黄丸との違いとして覚えておきましょう。
問6
その他の泌尿器用薬として用いられる漢方処方製剤は、体質や症状を考慮せず、排尿症状があれば誰にでも同じように使用できる。
解説
誤り。漢方処方製剤は、体力、冷え、尿量、むくみなどの体質・症状を考慮して使い分けられます。
問7
カンゾウを含む漢方処方製剤を複数使用しても、グリチルリチン酸の摂取量が増えることはない。
解説
誤り。カンゾウを含む医薬品を複数使用すると、グリチルリチン酸の摂取量が増えることがあります。過量摂取では偽アルドステロン症に注意します。
問8
排尿時の不快感や残尿感が長期間続いていても、一般用医薬品を使用し続ければよい。
解説
誤り。長期間続く排尿症状では、尿路感染症だけでなく尿路結石、前立腺疾患、腎臓疾患などが原因となっている可能性があります。症状が改善しない場合は医療機関を受診します。
問9
血尿がみられる場合でも、一般用医薬品による自己治療を続けてよい。
解説
誤り。血尿は尿路感染症だけでなく、尿路結石や腎臓・膀胱などの重大な疾患でも生じる可能性があります。自己治療を続けず、医療機関を受診します。
問10
排尿時の不快感に発熱や腰痛、背中の痛みを伴う場合には、腎盂腎炎などを考えて医療機関を受診する。
解説
正しい。発熱や腰痛などを伴う排尿症状では、腎盂腎炎などの感染症が疑われることがあります。一般用医薬品だけで対処せず、医療機関を受診することが重要です。
まとめ
その他の泌尿器用薬では、まずウワウルシ=尿路の殺菌消毒、その他の代表的な生薬=利尿という分類を押さえましょう。
生薬では、カゴソウ、キササゲ、サンキライ、ソウハクヒ、モクツウ、ブクリョウの利尿作用を整理します。
漢方処方製剤では、牛車腎気丸・八味地黄丸・六味丸の違い、とくに附子の有無が重要です。
また、猪苓湯・五淋散=排尿時の痛みや不快感などの尿路症状として覚えておくと整理しやすくなります。
最後に、血尿、発熱を伴う排尿症状、長期間続く症状や繰り返す症状では、重大な疾患の可能性を考えて医療機関への受診につなげることが重要です。

