その他の循環器用薬とは
「その他の循環器用薬」には、末梢の血行を改善したり、軽度な心疾患に伴う動悸、息切れ、むくみなどを改善したりする目的で使用される成分が含まれます。
この分野では、特にコウカ、ユビデカレノン、ヘプロニカート、イノシトールヘキサニコチネート、ルチンと、漢方処方製剤の三黄瀉心湯、七物降下湯が重要です。
強心薬、高コレステロール改善薬、貧血用薬とは目的や成分が異なるため、それぞれを区別して覚えましょう。
① コウカ(紅花)
コウカ(紅花)は、キク科のベニバナの管状花をそのまま、または黄色色素の大部分を除いたものを基原とする生薬です。
コウカには、末梢の血行を促してうっ血を除く作用があります。
そのため、冷え症や血色不良に用いられます。
日本薬局方収載のコウカ
日本薬局方収載のコウカを煎じて服用する製品では、冷え症及び血色不良に用いられます。
ここは試験で「高血圧」と結びつけて誤りにする問題が出やすいため、注意しましょう。
コウカ=末梢血行促進・うっ血除去・冷え症・血色不良と覚えておくと整理しやすくなります。
② ユビデカレノン
ユビデカレノンは、別名コエンザイムQ10とも呼ばれます。
肝臓や心臓などに多く存在し、エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助ける成分です。
摂取された栄養素からエネルギーが産生される際に、ビタミンB群とともに働くことも重要です。
心筋への作用
ユビデカレノンは、心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高めることによって、血液循環の改善効果を示すとされています。
一般用医薬品では、軽度な心疾患による動悸、息切れ、むくみなどに用いられます。
15歳未満の小児には使用しない
小児において心疾患による動悸、息切れ、むくみなどがある場合には、一般用医薬品による自己治療よりも医師の診療が優先されます。
そのため、15歳未満の小児向けのユビデカレノン製品はありません。
「コエンザイムQ10=栄養補助だから子どもでも問題ない」と考えないことが重要です。
2週間程度使用して改善しない場合
ユビデカレノンを含む一般用医薬品を2週間程度使用しても症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を継続することは適当ではありません。
動悸、息切れ、むくみの原因が心疾患以外の病気や、より重い循環器疾患などである可能性もあるため、医療機関を受診するなどの対応が必要です。
③ ヘプロニカート
ヘプロニカートは、体内で代謝されることでニコチン酸を遊離し、そのニコチン酸の働きによって末梢の血液循環を改善する作用を示すとされています。
「ヘプロニカート→ニコチン酸→末梢血行改善」と流れで覚えておきましょう。
④ イノシトールヘキサニコチネート
イノシトールヘキサニコチネートも、代謝されることでニコチン酸が遊離し、その働きによって末梢の血液循環を改善する作用を示すとされています。
ヘプロニカートと同様に、末梢循環改善成分として整理します。
ビタミンEとの組み合わせ
ヘプロニカートやイノシトールヘキサニコチネートは、ビタミンEと組み合わせて用いられることがあります。
末梢の血液循環を改善する成分として、セットで覚えておきましょう。
⑤ ルチン
ルチンは、ビタミン様物質の一種です。
高血圧などにおける毛細血管の補強・強化の効果を期待して用いられます。
コウカやヘプロニカートなどとは作用が異なり、ルチンは毛細血管を丈夫にする方向で覚えると整理しやすくなります。
⑥ 三黄瀉心湯
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)は、体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのある人の高血圧の随伴症状などに用いられる漢方処方製剤です。
高血圧に伴うのぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重、不眠、不安のほか、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症などに用いられます。
三黄瀉心湯とダイオウ
三黄瀉心湯は、構成生薬としてダイオウを含みます。
そのため、三黄瀉心湯を使用している場合には、他の瀉下薬との併用を避ける必要があります。
ダイオウの瀉下作用と他の瀉下成分の作用が重なり、腹痛や下痢などが強く現れるおそれがあります。
⑦ 七物降下湯
七物降下湯(しちもつこうかとう)は、体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害がない人の高血圧に伴う随伴症状に用いられます。
代表的な症状として、のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重などがあります。
三黄瀉心湯と比較して、体力や顔色などの適応となる体質が異なる点がポイントです。
15歳未満の小児には使用しない
七物降下湯は小児向けの漢方処方製剤ではなく、15歳未満の小児への使用を避ける必要があります。
「漢方だから子どもでも使える」とは限らないため注意しましょう。
その他の循環器用薬の副作用・注意点
循環器用薬では、症状が軽いからといって長期間自己判断で使用し続けることは適切ではありません。
特に、動悸、息切れ、むくみなどは、重大な心疾患や呼吸器疾患などの初期症状である場合もあります。
症状が続く場合には、原因を確認するために医療機関を受診することが重要です。
その他の循環器用薬の相互作用
循環器用薬では、他の医薬品や生薬製剤との成分の重複にも注意が必要です。
特に漢方処方製剤では、同じ生薬を含む製品を複数使用すると、作用が強くなったり、副作用が現れやすくなったりする場合があります。
三黄瀉心湯のようにダイオウを含む処方では、他の瀉下薬との併用にも注意します。
医師の治療を受けている人は相談
何らかの疾患について医師の治療を受けている場合には、一般用医薬品の循環器用薬が治療中の疾患に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、動悸や息切れ、むくみなどの症状そのものが、治療中の疾患によるものや、処方された医薬品の副作用によるものである可能性もあります。
そのため、医師の治療を受けている人では、循環器用薬を使用する前に、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談することが重要です。
受診が必要な場合
ユビデカレノンでは、2週間程度使用しても改善しない場合には、使用を継続せず受診します。
また、動悸、息切れ、むくみなどが突然現れたり、強くなったりしている場合にも、一般用医薬品だけで対処し続けないことが重要です。
特に胸痛、強い息苦しさ、失神、意識が薄れるなどの症状を伴う場合には、速やかに医療機関で診療を受ける必要があります。
試験で狙われやすいポイント
| 成分・処方 | 重要ポイント |
|---|---|
| コウカ | 末梢血行を促してうっ血を除く。冷え症・血色不良 |
| ユビデカレノン | コエンザイムQ10。心筋の酸素利用効率を高め、収縮力を高める |
| ユビデカレノン | 軽度な心疾患による動悸・息切れ・むくみ。15歳未満向け製品なし |
| ユビデカレノン | 2週間程度で改善しなければ受診 |
| ヘプロニカート | 代謝されてニコチン酸を遊離し、末梢血液循環を改善 |
| イノシトールヘキサニコチネート | ニコチン酸が遊離し、末梢血液循環を改善 |
| ルチン | ビタミン様物質。毛細血管の補強・強化 |
| 三黄瀉心湯 | のぼせ気味・顔面紅潮・便秘傾向などの高血圧随伴症状。ダイオウ含有 |
| 三黄瀉心湯 | 他の瀉下薬との併用を避ける |
| 七物降下湯 | 体力中等度以下、顔色不良、疲れやすい、胃腸障害なし。高血圧随伴症状 |
| 七物降下湯 | 15歳未満の小児への使用を避ける |
ここは絶対に覚えたい!
その他の循環器用薬は、まず「血行を良くする成分」と「心臓の働きを助ける成分」と「毛細血管を補強する成分」に分けると覚えやすくなります。
コウカ → 末梢血行促進・うっ血除去
ユビデカレノン → コエンザイムQ10・心筋の酸素利用効率向上
ヘプロニカート・イノシトールヘキサニコチネート → ニコチン酸を遊離・末梢血液循環改善
ルチン → 毛細血管の補強・強化
漢方では、三黄瀉心湯=のぼせ・顔面紅潮・便秘傾向・ダイオウ、七物降下湯=顔色不良・疲れやすい・胃腸障害なし・15歳未満は使用を避けると整理しましょう。
そして、ユビデカレノンを2週間程度使用して改善しなければ受診も重要です。
予想問題
問1
コウカは、毛細血管を補強・強化する作用を期待して、高血圧に伴う症状に用いられる。
解説
誤り。毛細血管の補強・強化を期待して用いられるのはルチンです。コウカは末梢の血行を促してうっ血を除く作用があり、冷え症や血色不良に用いられます。
問2
ユビデカレノンは、別名コエンザイムQ10とも呼ばれ、エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助ける。
解説
正しい。ユビデカレノンはコエンザイムQ10とも呼ばれ、エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助けます。また、ビタミンB群とともにエネルギー産生に関与します。
問3
ユビデカレノンは、心筋の酸素利用効率を低下させて収縮力を弱めることによって血液循環を改善する。
解説
誤り。ユビデカレノンは、心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高めることによって、血液循環の改善効果を示すとされています。
問4
ユビデカレノンを含む一般用医薬品には、15歳未満の小児向け製品がある。
解説
誤り。小児における心疾患による動悸、息切れ、むくみには医師の診療が優先されるため、15歳未満の小児向けの製品はありません。
問5
ヘプロニカートは、体内で代謝されることでニコチン酸を遊離し、その働きによって末梢の血液循環を改善する作用を示す。
解説
正しい。ヘプロニカートは代謝されてニコチン酸を遊離し、そのニコチン酸の働きによって末梢血液循環を改善するとされています。
問6
ルチンは、代謝されてニコチン酸を遊離し、末梢の血液循環を改善する成分である。
解説
誤り。ニコチン酸を遊離して末梢循環を改善するのはヘプロニカートやイノシトールヘキサニコチネートです。ルチンはビタミン様物質で、毛細血管の補強・強化を期待して用いられます。
問7
三黄瀉心湯は、構成生薬としてダイオウを含む。
解説
正しい。三黄瀉心湯にはダイオウが含まれるため、他の瀉下薬との併用を避ける必要があります。
問8
七物降下湯は、体力中等度以上で顔色がよく、疲れにくく、胃腸障害のある人に適する。
解説
誤り。七物降下湯は、体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のない人の高血圧に伴う随伴症状に適するとされています。
問9
七物降下湯は小児向けの漢方処方製剤であり、15歳未満の小児にも使用できる。
解説
誤り。七物降下湯は小児向けではなく、15歳未満の小児への使用を避ける必要があります。
問10
ユビデカレノンを含む一般用医薬品を2週間程度使用しても動悸、息切れ、むくみなどの改善がみられない場合でも、漫然と使用を継続する。
解説
誤り。2週間程度使用して症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を継続せず、医療機関を受診するなどの対応が必要です。
まとめ
その他の循環器用薬では、コウカ、ユビデカレノン、ヘプロニカート、イノシトールヘキサニコチネート、ルチンの作用を整理することが重要です。
特に、コウカ=末梢血行促進、ユビデカレノン=コエンザイムQ10、ヘプロニカート・イノシトールヘキサニコチネート=ニコチン酸を遊離、ルチン=毛細血管の補強という対応関係を覚えておきましょう。
漢方処方製剤では、三黄瀉心湯=ダイオウを含む、七物降下湯=15歳未満の使用を避けることが重要です。
さらに、ユビデカレノンは15歳未満向け製品がなく、2週間程度使用して改善しない場合は受診という点も試験で狙われやすいポイントです。

