禁煙補助剤とは
禁煙補助剤は、ニコチン置換療法に使用される、ニコチンを有効成分とする医薬品です。
ニコチン置換療法は、ニコチンの摂取方法を喫煙以外に換え、ニコチン離脱症状を軽減しながら徐々にニコチンの摂取量を減らし、最終的にニコチン摂取をゼロにする方法です。
一般用医薬品の禁煙補助剤には、咀嚼剤とパッチ製剤があります。
咀嚼剤は噛むことによって口腔内でニコチンが放出され、口腔粘膜から吸収されて血液中に移行します。パッチ製剤は、1日1回皮膚に貼付することで、ニコチンが皮膚を透過して血中に移行します。
ニコチン依存と離脱症状
タバコの煙に含まれるニコチンは、肺胞の毛細血管から血液中に取り込まれると、すみやかに脳内へ到達します。
そして、脳の情動を司る部位に働き、覚醒、リラックス効果などをもたらします。
習慣的に喫煙していると、喫煙しないことで次第に体の調子が悪く感じられるようになります。
血中ニコチン濃度が低下すると、
- イライラ感
- 集中困難
- 落ち着かない
などのニコチン離脱症状(禁断症状)が現れ、喫煙習慣からの離脱が困難になります。
禁煙には本人の意思も重要
禁煙を達成するためには、禁煙補助剤を使用するだけではなく、本人の禁煙する意思が重要です。
そのうえで、ニコチン離脱症状を軽減するニコチン置換療法を利用することで、禁煙を進めやすくします。
禁煙補助剤の種類
| 種類 | 使い方 | ニコチンの吸収 |
|---|---|---|
| 咀嚼剤 | ゆっくりと断続的に噛む | 口腔粘膜から吸収 |
| パッチ製剤 | 1日1回皮膚に貼付 | 皮膚を透過して血中へ移行 |
ニコチン咀嚼剤の正しい噛み方
ニコチン咀嚼剤は、一般的な菓子のガムとは異なります。
菓子のガムのように勢いよく噛むと唾液が多く分泌され、ニコチンが唾液とともに飲み込まれてしまいます。
すると、口腔粘膜からのニコチン吸収が十分に行われなくなり、さらに吐きけや腹痛等の副作用が現れやすくなるため、ゆっくりと断続的に噛むこととされています。
唾液が出過ぎた場合
噛みすぎて唾液が出過ぎた場合には、唾液を飲み込まず、ティッシュ等に吐き出すこととされています。
一度に2個以上使用しない
ニコチン咀嚼剤は、大量に使用したからといって禁煙達成が早まるわけではありません。
むしろ、ニコチンを過剰に摂取することで副作用が起こるおそれがあります。
そのため、1度に2個以上の使用は避ける必要があります。
ニコチン咀嚼剤を避ける必要がある人
顎の関節に障害がある人
咀嚼剤は噛んで使用するため、顎の関節に障害がある人では使用を避ける必要があります。
口内炎や喉の痛み・腫れがある人
口内炎や喉の痛み・腫れがある場合には、咀嚼剤によって口内・喉の刺激感等の症状が現れやすくなるため注意が必要です。
重い心臓病・急性期脳血管障害がある人
ニコチンは交感神経系を刺激する作用を有するため、循環器系への影響に注意する必要があります。
特に、
- 脳梗塞・脳出血等の急性期脳血管障害
- 3か月以内の心筋梗塞発作
- 重い狭心症
- 重い不整脈
などの基礎疾患がある人では、循環器系に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるため、禁煙補助剤の使用を避ける必要があります。
うつ病の既往がある人
うつ病と診断されたことがある人では、禁煙時の離脱症状によって、うつ症状が悪化することがあるため、禁煙補助剤の使用を避ける必要があります。
妊婦・授乳婦
妊婦又は妊娠していると思われる女性、母乳を与える女性では、摂取されたニコチンによって胎児又は乳児に影響が生じるおそれがあるため、使用を避ける必要があります。
非喫煙者が使用してはいけない理由
非喫煙者は一般にニコチンに対する耐性がないため、禁煙補助剤を誤って使用すると、
- 吐きけ
- めまい
- 腹痛
などの症状が現れやすくなります。
そのため、非喫煙者が誤って使用しないよう注意する必要があります。
禁煙補助剤の主な副作用
禁煙補助剤では、次のような副作用が現れることがあります。
| 分類 | 主な副作用 |
|---|---|
| 口腔・咽頭 | 口内炎、喉の痛み |
| 消化器 | 悪心・嘔吐、食欲不振、下痢 |
| 皮膚 | 発疹・発赤、掻痒感 |
| 精神神経 | 頭痛、めまい、思考減退、眠気 |
| 循環器 | 動悸 |
| その他 | 胸部不快感、胸部刺激感、顔面紅潮、顔面浮腫、気分不良 |
このように、禁煙補助剤そのものによる副作用と、禁煙に伴う離脱症状を区別して考えることも重要です。
ニコチンと相互作用
コーヒー・炭酸飲料に注意
ニコチン咀嚼剤では、口腔内が酸性になるとニコチンの吸収が低下します。
そのため、コーヒーや炭酸飲料など、口腔内を酸性にする食品を摂取した後しばらくは、使用を避けることとされています。
アドレナリン作動成分との併用
ニコチンには交感神経系を興奮させる作用があります。
そのため、アドレナリン作動成分が配合された医薬品と併用すると、その作用を増強させるおそれがあります。
対象となる医薬品には、
- 鎮咳去痰薬
- 鼻炎用薬
- 痔疾用薬
などがあります。
禁煙補助剤を使用中にタバコを吸ってはいけない
禁煙補助剤は、喫煙を完全に止めたうえで使用することが重要です。
特に、禁煙補助剤の使用中又は使用直後に喫煙すると、血中のニコチン濃度が急激に高まるおそれがあります。
また、他のニコチン含有製剤を併用した場合にも、ニコチンの過剰摂取となるおそれがあります。
治療中の病気がある人は事前に相談
次のような疾患の診断を受けた人では、禁煙補助剤が現在の治療薬の効果に影響したり、症状を悪化させたりする可能性があります。
- 心臓疾患(心筋梗塞、狭心症、不整脈)
- 脳血管障害(脳梗塞、脳出血等)
- バージャー病(末梢血管障害)
- 高血圧
- 甲状腺機能障害
- 褐色細胞腫
- 糖尿病(インスリン製剤を使用している人)
- 咽頭炎
- 食道炎
- 胃・十二指腸潰瘍
- 肝臓病
- 腎臓病
これらに該当する場合は、禁煙補助剤を使用する前に、治療を行っている医師又は処方薬を調剤した薬剤師に相談する必要があります。
禁煙に伴う離脱症状はいつ起こる?
禁煙に伴うイライラ感、集中困難、落ち着かないなどのニコチン離脱症状は、通常、禁煙開始から1~2週間の間に起きることが多いとされています。
禁煙補助剤を使用して、こうした離脱症状を軽減しながら禁煙を進めることが重要です。
禁煙を続けるための工夫
禁煙時には、喫煙によって行っていたリラックス方法を別の方法に置き換えることも有益です。
例えば、
- 喫煙以外のリラックス法を実践する
- スポーツをする
- 散歩をする
- 趣味などに取り組む
など、タバコを忘れるための努力が有益とされています。
禁煙補助剤は最初から無理に減らさない
禁煙補助剤は、ニコチン離脱症状を軽減しながら、徐々に使用量を減らしていくことが基本です。
最初から無理に使用量を減らそうとするより、離脱症状を抑えながら段階的に減らしていくほうが、結果的に禁煙達成につながるとされています。
ただし、禁煙補助剤は長期間にわたって使用されるべきものではなく、添付文書で定められた期限を超えて使用することは避ける必要があります。
禁煙外来を利用するケース
禁煙補助剤を使用しても禁煙達成が困難なほどの重度のニコチン依存がある場合には、ニコチン依存症の治療を行う禁煙外来の受診を勧めることも重要です。
禁煙補助剤の重要ポイント一覧
| 項目 | 重要ポイント |
|---|---|
| 禁煙補助剤 | ニコチンを有効成分とする医薬品 |
| 目的 | ニコチン置換療法による離脱症状の軽減 |
| 種類 | 咀嚼剤・パッチ製剤 |
| 咀嚼剤 | ゆっくり断続的に噛む |
| 咀嚼剤 | 1度に2個以上使用しない |
| 唾液が出過ぎた場合 | 飲み込まずティッシュ等に吐き出す |
| 顎関節障害 | 咀嚼剤を避ける |
| 妊婦・授乳婦 | 使用を避ける |
| 非喫煙者 | 誤使用に注意。吐きけ・めまい・腹痛等が出やすい |
| 使用中・直後の喫煙 | 血中ニコチン濃度が急上昇するため避ける |
| 他のニコチン製剤 | 併用するとニコチン過剰摂取のおそれ |
| コーヒー・炭酸飲料 | 口腔内を酸性にしてニコチン吸収を低下させる |
| アドレナリン作動成分 | ニコチンとの併用で作用増強のおそれ |
| 離脱症状 | 禁煙開始1~2週間に起きることが多い |
| 長期使用 | 添付文書で定められた期限を超えない |
| 重度依存 | 禁煙外来の受診を考慮 |
ここは絶対に覚えたい!
禁煙補助剤 → ニコチン置換療法に使用
ニコチン置換療法 → 喫煙以外の方法でニコチンを摂取 → 徐々に減量 → 最終的にゼロ
咀嚼剤 → ゆっくり断続的に噛む
咀嚼剤 → 1度に2個以上使用しない
咀嚼剤 → 唾液が出過ぎたら飲み込まず吐き出す
妊婦・授乳婦 → 使用を避ける
禁煙補助剤使用中・直後の喫煙 → ニコチン過剰摂取のおそれ
他のニコチン製剤との併用 → ニコチン過剰摂取
口腔内が酸性 → ニコチン吸収低下 → コーヒー・炭酸飲料に注意
ニコチン+アドレナリン作動成分 → 作用増強のおそれ
離脱症状 → 禁煙開始1~2週間に起こることが多い
重度の依存 → 禁煙外来を考慮
予想問題
問1
禁煙補助剤は、ニコチンを有効成分とし、ニコチン置換療法に使用される医薬品である。
解説
正しい。禁煙補助剤はニコチンを有効成分とする医薬品で、ニコチン置換療法に使用されます。
問2
ニコチン置換療法では、ニコチンの摂取量を最初から一気にゼロにすることを目的とする。
解説
誤り。喫煙以外の方法でニコチンを摂取しながら離脱症状を軽減し、徐々に摂取量を減らして最終的にゼロにします。
問3
ニコチン咀嚼剤は、一般的な菓子のガムと同じように勢いよく噛むほうが、ニコチンの吸収が高まる。
解説
誤り。強く噛むと唾液が多く分泌され、ニコチンが唾液とともに飲み込まれてしまい、口腔粘膜からの吸収が十分に行われなくなります。さらに吐きけや腹痛等が現れやすくなるため、ゆっくりと断続的に噛みます。
問4
ニコチン咀嚼剤は、一度に2個以上使用すると禁煙達成が早まるため、積極的に使用するとよい。
解説
誤り。大量に使用しても禁煙達成が早まるわけではなく、ニコチン過剰摂取による副作用のおそれがあります。1度に2個以上の使用は避けます。
問5
妊婦又は妊娠していると思われる女性、母乳を与える女性は、禁煙補助剤を使用できる。
解説
誤り。摂取されたニコチンによって胎児又は乳児に影響が生じるおそれがあるため、使用を避けます。
問6
禁煙補助剤の使用中又は使用直後にタバコを吸っても、ニコチンの過剰摂取につながることはない。
解説
誤り。血中のニコチン濃度が急激に高まり、ニコチンの過剰摂取となるおそれがあります。
問7
ニコチン咀嚼剤を使用する前には、コーヒーや炭酸飲料を飲んでもニコチンの吸収に影響しない。
解説
誤り。口腔内が酸性になるとニコチンの吸収が低下するため、コーヒーや炭酸飲料などを摂取した後しばらくは使用を避けます。
問8
ニコチンは交感神経系を興奮させる作用があるため、アドレナリン作動成分が配合された医薬品との併用により、その作用が増強されるおそれがある。
解説
正しい。鎮咳去痰薬、鼻炎用薬、痔疾用薬など、アドレナリン作動成分を含む医薬品との併用に注意します。
問9
禁煙に伴うイライラ感、集中困難、落ち着かないなどのニコチン離脱症状は、通常、禁煙開始から1~2週間の間に起きることが多い。
解説
正しい。禁煙に伴う離脱症状は、通常、禁煙開始から1~2週間の間に起きることが多いとされています。
問10
禁煙補助剤を使用しても禁煙達成が困難なほどの重度のニコチン依存がある場合には、禁煙外来の受診を勧めることも考慮する。
解説
正しい。重度のニコチン依存がある場合には、ニコチン依存症の治療を行う禁煙外来の受診を勧めることも重要です。
まとめ
禁煙補助剤では、まず「ニコチンを使って禁煙するのは矛盾ではなく、ニコチン置換療法によって離脱症状を軽減しながら徐々にニコチンを減らす」という仕組みを理解しましょう。
試験では、咀嚼剤はゆっくり断続的に噛む、1度に2個以上使用しない、妊婦・授乳婦は使用を避ける、使用中や使用直後は喫煙しないというポイントが重要です。
相互作用では、口腔内を酸性にするコーヒー・炭酸飲料、アドレナリン作動成分、他のニコチン製剤との関係を覚えておきましょう。
また、禁煙に伴う離脱症状は禁煙開始1~2週間に起こることが多いこと、重度のニコチン依存では禁煙外来の受診を考慮することも重要です。

