登録販売者試験第2章「人体の働きと医薬品」では、医薬品を使用した後、有効成分が体内でどのように吸収され、全身へ運ばれ、代謝され、排泄されるのかを理解することが重要です。
第2章⑬では、「薬の生体内運命」について学びます。
医薬品は、使用しただけですぐに薬効を示すわけではありません。
全身作用を目的とする医薬品では、有効成分が体内へ吸収されて循環血液中に移行し、その後、全身の組織へ分布して作用します。また、体内では代謝や排泄によって有効成分が徐々に消失していきます。
特に、
・薬の吸収
・消化管からの吸収
・粘膜からの吸収
・皮膚からの吸収
・薬の分布
・薬の代謝
・薬の排泄
・肝初回通過効果
・血漿タンパク質との結合
・腎機能と薬の排泄
・薬の血中濃度
は、登録販売者試験で重要なポイントです。
本記事では、薬の生体内運命について、試験で判断しやすいように整理して解説します。
この記事で学べること
この記事では、次の内容を整理します。
・薬の生体内運命とは何か
・全身作用と局所作用
・有効成分の吸収
・消化管からの吸収
・徐放性製剤
・粘膜からの吸収
・坐剤の吸収
・舌下錠などの吸収
・鼻粘膜からの吸収
・点眼薬の吸収
・皮膚からの吸収
・薬の代謝
・薬の排泄
・肝初回通過効果
・血漿タンパク質との結合
・腎機能低下と血中濃度
・試験で間違えやすいポイント
・予想問題
薬の生体内運命とは
医薬品を使用すると、その有効成分は体内でさまざまな過程をたどります。
全身作用を目的とする医薬品では、有効成分が消化管などから吸収されて循環血液中に移行し、血液によって全身の組織や器官へ運ばれます。
その後、有効成分は体内で代謝を受けたり、尿などとして排泄されたりすることで、徐々に体内から消失していきます。
このような体内での薬の動きを薬物動態といいます。
全身作用と局所作用
医薬品の作用には、大きく分けて全身作用と局所作用があります。
全身作用
全身作用とは、有効成分が循環血液中に移行して全身を巡り、目的とする部位で薬効を示すものです。
内服薬には、消化管から吸収された有効成分が循環血液中に移行して全身作用を示すものが多くあります。
局所作用
局所作用とは、医薬品を適用した特定の部位で有効成分が作用するものです。
外用薬の多くは、適用した部位に対する局所的な効果を目的としています。
ただし、外用薬の中にも、皮膚などから吸収された有効成分が循環血液中に移行し、全身作用を示すように設計されたものがあります。
有効成分の吸収
全身作用を目的とする医薬品では、有効成分が消化管などから吸収され、循環血液中に移行することが必要です。
一方、局所作用を目的とする医薬品では、目的とする局所の組織に有効成分が浸透して作用するものが多くあります。
吸収される経路によって、その後の有効成分の体内での動きも異なります。
消化管からの吸収
内服薬のほとんどは、有効成分が消化管から吸収されて循環血液中に移行し、全身作用を示します。
錠剤やカプセル剤の吸収
錠剤やカプセル剤などの固形剤では、消化管で吸収される前に、まず製剤が消化管内で崩壊し、有効成分が溶け出す必要があります。
腸溶性製剤のような特殊な製剤を除き、多くの内服薬では胃で有効成分が溶出します。
小腸での吸収
溶け出した有効成分は、主に小腸から吸収されます。
一般に、消化管からの吸収は、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象によって行われます。
また、有効成分の吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品の作用によって影響を受けることがあります。
食事と服用時期
有効成分によっては消化管粘膜に障害を起こすものもあります。
そのため、医薬品によっては食事の時間と服用時期との関係が用法として定められています。
徐放性製剤
内服薬には、服用後の作用を持続させるため、有効成分がゆっくり溶出するように作られているものがあります。
これを徐放性製剤といいます。
粘膜からの吸収
内服以外の用法で使用される医薬品にも、適用部位の粘膜から有効成分を吸収させて全身作用を示すものがあります。
坐剤
坐剤は、肛門から挿入して直腸内で溶解させ、直腸粘膜から有効成分を吸収させる製剤です。
直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布しているため、有効成分が循環血液中へ入りやすく、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れることがあります。
口腔粘膜からの吸収
口に含んで使用する医薬品の中には、口腔粘膜から有効成分が吸収されて全身作用を示すものがあります。
代表例として、抗狭心症薬のニトログリセリンの舌下錠やスプレー、禁煙補助薬のニコチン咀嚼剤があります。
これらは消化管から吸収させるのではなく、口腔粘膜から有効成分を吸収させます。
肝臓を最初に通らない吸収
直腸や口腔粘膜から吸収された有効成分は、部位によっては肝臓を最初に経由することなく循環血液中に入り、全身へ分布します。
そのため、内服の場合とは異なる体内動態を示します。
鼻粘膜からの吸収
鼻腔の粘膜に医薬品を適用した場合、その成分は循環血液中に入ることがあります。
一般用医薬品には、全身作用を目的とした点鼻薬はなく、点鼻薬はいずれも鼻腔粘膜への局所作用を目的として用いられています。
しかし、鼻腔粘膜の下には毛細血管が豊富にあるため、点鼻薬の成分は循環血液中へ移行しやすく、全身性の副作用を生じることがあります。
点眼薬と鼻粘膜
点眼薬は眼の粘膜に適用する医薬品ですが、点眼した成分が鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがあります。
その結果、眼以外の部位に有効成分が到達し、全身性の副作用を起こすことがあります。
そのため、場合によっては点眼時に目頭の鼻涙管の部分を押さえ、有効成分が鼻へ流れるのを防ぐことが重要です。
皮膚からの吸収
皮膚に適用する塗り薬や貼り薬などは、適用部位に対する局所的な効果を目的とするものがほとんどです。
一方、有効成分が皮膚を通って体内の組織で作用する医薬品では、皮膚から浸透する量が皮膚の状態や傷の有無、その程度などによって影響を受けます。
通常、皮膚表面から循環血液中へ移行する量は比較的少ないですが、適用部位の面積、使用量、使用回数、使用頻度などによっては、全身作用が現れることがあります。
また、アレルギー性の副作用は、医薬品を適用した部位以外にも現れることがあります。
薬の代謝
代謝とは、物質が体内で化学的に変化することです。
循環血液中へ移行した有効成分は、体内を循環するうちに徐々に代謝を受けます。
代謝によって、有効成分が分解されたり、体内の他の物質と結合したりして、構造が変化します。
その結果、薬の作用が失われることがあります。
一方で、代謝によって新たに作用が現れる場合や、体外へ排泄されやすい水溶性の物質へ変化する場合もあります。
薬の排泄
排泄とは、代謝によって生じた物質や有効成分などが体外へ排出されることです。
有効成分は、未変化体のまま、または代謝物として、主に次の経路から排泄されます。
・腎臓から尿中へ排泄
・肝臓から胆汁中へ排泄
・肺から呼気中へ排泄
その他に、汗中や母乳中へ移行することもあります。
汗や母乳を通じた排出は、体内からの消失経路としての意義は小さいものの、母乳中への移行は乳児への副作用という点から重要です。
肝初回通過効果
経口投与された有効成分は、消化管から吸収されると、消化管の毛細血管から血液中へ移行します。
その血液は全身循環に入る前に、門脈を通って肝臓を経由します。
そのため、吸収された有効成分の一部は、全身循環に入る前に肝臓の酵素によって代謝されます。
このように、消化管から吸収された有効成分が全身循環へ移行する前に肝臓で代謝を受けることを、肝初回通過効果といいます。
肝機能が低下している場合
肝機能が低下している人では、医薬品を代謝する能力が低下しているため、正常な人と比べて全身循環に到達する有効成分の量が多くなることがあります。
その結果、効き目が過剰に現れたり、副作用が生じやすくなったりすることがあります。
血漿タンパク質との結合
循環血液中に移行した有効成分の多くは、血液中の血漿タンパク質と結合して複合体を形成しています。
血漿タンパク質と結合している有効成分は、薬物代謝酵素による代謝やトランスポーターによる輸送を受けにくくなるため、代謝や分布が制限されます。
その結果、血中濃度の低下が徐々に起こることがあります。
排泄との関係
血漿タンパク質と結合した複合体は、腎臓でろ過されにくくなります。
そのため、有効成分が長く循環血液中にとどまり、作用が持続する原因となることがあります。
腎機能と薬の排泄
循環血液中に存在する有効成分の多くは、未変化体または代謝物として腎臓から尿中へ排泄されます。
そのため、腎機能が低下している人では、有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくくなることがあります。
その結果、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用が生じやすくなったりすることがあります。
試験で覚えておきたいポイント
第2章⑬では、次のポイントを押さえておきましょう。
① 全身作用を目的とする医薬品では、有効成分が循環血液中に移行する必要がある
② 内服薬の有効成分は主に小腸から吸収される
③ 錠剤やカプセル剤は、吸収される前に崩壊して有効成分が溶け出す必要がある
④ 徐放性製剤は、有効成分がゆっくり溶出するように作られている
⑤ 坐剤では直腸粘膜から有効成分が吸収される
⑥ ニトログリセリンの舌下錠などは口腔粘膜から吸収される
⑦ 点鼻薬の成分は鼻粘膜から循環血液中へ移行することがある
⑧ 点眼薬の成分が鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがある
⑨ 皮膚からの吸収量は皮膚の状態や傷の有無、使用量などによって影響を受ける
⑩ 代謝によって有効成分は構造が変化する
⑪ 有効成分は腎臓、肝臓、肺などから排泄される
⑫ 経口投与された有効成分は門脈を通って肝臓を最初に通過する
⑬ 肝初回通過効果によって、全身循環へ移行する有効成分量が減少する
⑭ 肝機能が低下すると、全身循環に到達する有効成分量が増えることがある
⑮ 血漿タンパク質と結合した有効成分は、腎臓でろ過されにくい
⑯ 腎機能が低下すると、有効成分の排泄が遅れて血中濃度が下がりにくくなることがある
試験で間違えやすいポイント
「内服薬の有効成分は主に胃から吸収される」
→誤り
有効成分は主に小腸で吸収されます。
「徐放性製剤は有効成分が短時間で一気に溶出するように作られている」
→誤り
徐放性製剤は、有効成分がゆっくり溶出するように作られています。
「坐剤は直腸粘膜から有効成分を吸収させることがある」
→正しい
坐剤では、直腸粘膜から有効成分が吸収され、全身作用を示すものがあります。
「点鼻薬は全身作用を目的とした一般用医薬品である」
→誤り
一般用医薬品には全身作用を目的とした点鼻薬はなく、鼻腔粘膜への局所作用を目的として使用されます。
「点鼻薬の成分が全身性の副作用を起こすことはない」
→誤り
鼻腔粘膜の下には毛細血管が豊富にあるため、成分が循環血液中へ移行し、全身性の副作用を生じることがあります。
「経口投与された有効成分は、全身循環へ入る前に門脈を通って肝臓を経由する」
→正しい
消化管から吸収された有効成分は門脈を通って肝臓を経由し、一部が代謝を受けます。
「肝初回通過効果によって、吸収された有効成分の全量がそのまま全身循環へ入る」
→誤り
吸収された有効成分の一部は肝臓で代謝されるため、全身循環へ移行する量はその分少なくなります。
「腎機能が低下すると、有効成分の血中濃度が下がりにくくなることがある」
→正しい
腎機能が低下すると尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくくなるため、効き目が過剰に現れたり副作用を生じやすくなったりすることがあります。
「血漿タンパク質と結合した有効成分は腎臓でろ過されやすい」
→誤り
血漿タンパク質との複合体は腎臓でろ過されにくいため、有効成分が長く循環血液中にとどまる原因となることがあります。
予想問題
問1
医薬品の吸収について、正しいものはどれか。
① 内服薬の有効成分は主に胃から吸収される
② 内服薬の有効成分は主に小腸から吸収される
③ 内服薬は崩壊しなくても必ず吸収される
④ 徐放性製剤は有効成分を一度に溶出させる
答え:②
解説
内服薬の有効成分は主に小腸から吸収されます。錠剤やカプセル剤では、吸収される前に製剤が崩壊し、有効成分が溶け出す必要があります。
問2
肝初回通過効果について、正しいものはどれか。
① 経口投与された有効成分は肝臓を経由せずに全身循環へ入る
② 消化管から吸収された有効成分は門脈を通って肝臓を経由する
③ 肝初回通過効果によって全身循環に入る有効成分量は必ず増える
④ 肝機能が低下すると有効成分は全身循環へ到達しにくくなる
答え:②
解説
経口投与された有効成分は、消化管から吸収された後、門脈を通って肝臓を経由します。その際に一部が代謝されるため、全身循環へ移行する有効成分量が減少します。
問3
薬の排泄について、正しいものはどれか。
① 有効成分は腎臓から尿中へ排泄されることがある
② 有効成分は体外へ排泄されることはない
③ 排泄は吸収と同じ意味である
④ 腎機能が低下すると排泄が速くなる
答え:①
解説
有効成分は未変化体または代謝物として、主に腎臓から尿中へ排泄されます。腎機能が低下すると排泄が遅れることがあります。
問4
血漿タンパク質と医薬品成分について、正しいものはどれか。
① 血漿タンパク質と結合した有効成分は腎臓でろ過されやすい
② 血漿タンパク質との結合によって有効成分が長く循環血液中にとどまることがある
③ 血漿タンパク質との結合は薬の体内動態に関係しない
④ 血漿タンパク質と結合した有効成分は必ずすぐ排泄される
答え:②
解説
血漿タンパク質と結合した有効成分は腎臓でろ過されにくく、長く循環血液中にとどまる原因となることがあります。
問5
点眼薬について、正しいものはどれか。
① 点眼薬の成分は眼以外へ移行することはない
② 点眼薬の成分は鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがある
③ 点眼薬は必ず全身作用だけを目的としている
④ 点眼時には目頭を押さえる必要はない
答え:②
解説
点眼薬の成分は鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがあり、眼以外の部位に到達して副作用を起こすことがあります。
まとめ
登録販売者試験第2章⑬では、医薬品の有効成分が体内でどのように吸収され、代謝され、排泄されるのかを理解しておきましょう。
特に重要なのは、
① 全身作用を目的とする医薬品では有効成分が循環血液中へ移行する
② 内服薬の有効成分は主に小腸から吸収される
③ 徐放性製剤は有効成分がゆっくり溶出するように作られている
④ 坐剤や舌下錠などでは粘膜から有効成分が吸収される
⑤ 点鼻薬や点眼薬の成分が全身へ移行することがある
⑥ 皮膚からの吸収量は皮膚の状態や使用量などによって影響を受ける
⑦ 有効成分は体内で代謝を受ける
⑧ 有効成分は腎臓、肝臓、肺などから排泄される
⑨ 経口投与された有効成分は門脈を通って肝臓を経由する
⑩ 肝初回通過効果によって全身循環に移行する有効成分量が減少する
⑪ 血漿タンパク質との結合は薬の体内動態に関係する
⑫ 腎機能が低下すると有効成分の排泄が遅れることがある
というポイントです。
薬の生体内運命を理解しておくと、なぜ同じ成分でも剤形や使用方法によって効き方が異なるのか、また、肝機能や腎機能が低下している人で副作用に注意する必要があるのかを理解しやすくなります。
第2章では、次に「薬の体内での働き」について学習していきます。

