ハエ、蚊、ゴキブリ、ダニ、シラミなど、私たちの生活環境にはさまざまな衛生害虫が存在します。
これらの衛生害虫を防除するために使用されるのが、殺虫剤や忌避剤です。
登録販売者試験では、殺虫剤・忌避剤について、
・衛生害虫の種類と特徴
・それぞれの防除方法
・有機リン系殺虫成分
・ピレスロイド系殺虫成分
・カーバメイト系・オキサジアゾール系殺虫成分
・有機塩素系殺虫成分
・昆虫成長阻害成分
・忌避成分
・シラミの駆除
・殺虫剤を長期間連用しない理由
などが出題されます。
特に、「有機リン系=アセチルコリンエステラーゼを不可逆的に阻害」、「ピレスロイド系=神経細胞に直接作用」、「フェノトリン=シラミ駆除で人体に直接使用できる殺虫成分」は重要です。
この記事では、登録販売者試験で狙われやすい殺虫剤・忌避剤のポイントを整理します。
殺虫剤・忌避剤とは
衛生害虫の防除を目的とする殺虫剤・忌避剤には、医薬品や医薬部外品があります。
殺虫剤は、害虫を殺したり駆除したりするために使用されます。
一方、忌避剤は、害虫を殺すのではなく、害虫が人体などに近づくことを防ぐために使用されます。
したがって、
殺虫剤 → 害虫を殺す・駆除する
忌避剤 → 害虫を近づきにくくする
と区別して覚えておきましょう。
なお、忌避剤は虫刺されによるかゆみや腫れを治療する薬ではありません。
衛生害虫とは
衛生害虫とは、病原体を媒介したり、食品などを汚染したりすることで、保健衛生上の害を及ぼす昆虫などをいいます。
代表的な衛生害虫には、
・ハエ
・蚊
・ゴキブリ
・シラミ
・トコジラミ
・ノミ
・イエダニ
・ツツガムシ
などがあります。
試験では、害虫の名前だけでなく、どのような健康被害を起こすのか、どのように防除するのかまで問われます。
① ハエ
ハエは、さまざまな病原体を媒介する衛生害虫です。
赤痢菌、チフス菌、コレラ菌、O-157大腸菌などの病原菌や、赤痢アメーバなどの病原体を媒介することがあります。
また、ハエの幼虫であるウジが、食品や汚物などで増殖します。
そのため、ハエの防除では、成虫だけを駆除するのではなく、ウジの防除を行うことが基本です。
ウジの防除には、通常、有機リン系殺虫成分が配合された殺虫剤が用いられます。
ハエ=ウジの防除が基本
と覚えておきましょう。
② 蚊
蚊も重要な衛生害虫です。
蚊は、日本脳炎、マラリア、黄熱、デング熱などの病原体を媒介することがあります。
蚊の幼虫はボウフラと呼ばれます。
ボウフラが成虫になる前に防除することが重要です。
そのため、蚊の防除では、成虫だけでなく、ボウフラが発生する水たまりなどの発生源をなくすことも重要になります。
また、水系に殺虫剤を投入する場合には、生態系に与える影響にも配慮する必要があります。
蚊=ボウフラの防除
という点を押さえておきましょう。
③ ゴキブリ
ゴキブリは、食品などを汚染する衛生害虫です。
サルモネラ菌、ブドウ球菌、腸炎ビブリオ菌、ボツリヌス菌、O-157大腸菌などの病原菌を媒介することがあります。
ゴキブリは、
・食品
・調理器具
・食器
・床
・壁や家具の隙間
などを汚染する可能性があります。
そのため、殺虫剤を使用するだけではなく、食品や生ごみを適切に管理し、ゴキブリが繁殖しにくい環境を作ることも重要です。
④ シラミ
シラミは、人に寄生して吸血する衛生害虫です。
代表的なものに、
・アタマジラミ
・コロモジラミ
・ケジラミ
があります。
シラミの防除には、フェノトリンが配合されたシャンプーやてんか粉などが用いられます。
ここは試験で非常に重要です。
フェノトリンは、殺虫成分の中で唯一、人体に直接適用されるものとして覚えておきましょう。
ただし、フェノトリン配合製品についても、製品ごとの用法・用量を守って使用する必要があります。
⑤ トコジラミ
トコジラミは、名前に「シラミ」とありますが、シラミの仲間ではありません。
カメムシ目に属する昆虫で、別名ナンキンムシとも呼ばれます。
主に、
・床や壁の隙間
・壁紙の裏
・畳の合わせ目
・ベッド周辺
などに潜伏します。
夜間に人を吸血し、刺されることで強いかゆみなどを生じることがあります。
トコジラミ=シラミではない=カメムシ目
という引っかけ問題に注意しましょう。
⑥ ノミ
ノミは吸血性の衛生害虫です。
ノミによる主な健康被害は、吸血された際のかゆみなどです。
また、ノミはペストなどの病原細菌を媒介することがあります。
ノミを防除する場合には、成虫だけでなく、卵や幼虫なども含めて対策する必要があります。
⑦ イエダニ
イエダニは、ネズミに寄生するダニです。
そのため、イエダニを防除するには、殺虫剤による対策だけではなく、宿主となるネズミを駆除することも重要です。
イエダニ=ネズミとの関係
は必ず覚えておきましょう。
⑧ 屋内塵性ダニ
屋内塵性ダニには、ヒョウヒダニ類やケナガコナダニなどがあります。
これらは人を刺すダニではありません。
しかし、ダニの糞や死骸がアレルゲンとなることがあります。
そのため、
・気管支喘息
・アトピー性皮膚炎
などとの関連が知られています。
屋内塵性ダニは完全に駆除することが難しいため、増殖させないことを基本とした防除が重要です。
湿度が高い環境ではダニが増殖しやすいため、室内の換気や乾燥、清掃なども重要になります。
殺虫剤の代表的な成分
殺虫剤にはさまざまな系統の殺虫成分があります。
登録販売者試験では、成分名だけでなく、
「どの系統か」→「どのように殺虫作用を示すか」
まで覚えることが重要です。
① 有機リン系殺虫成分
有機リン系殺虫成分の代表例には、
・ジクロルボス
・ダイアジノン
・フェニトロチオン
・フェンチオン
・トリクロルホン
・クロルピリホスメチル
・プロペタンホス
などがあります。
その中でもジクロルボスは特に重要です。
有機リン系の殺虫作用
有機リン系殺虫成分は、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼと不可逆的に結合します。
その結果、アセチルコリンが分解されにくくなり、神経系に異常が生じて殺虫作用を示します。
有機リン系
→ アセチルコリンエステラーゼ
→ 不可逆的に阻害
この組み合わせは最重要ポイントです。
有機リン系殺虫成分の中毒
ほ乳類や鳥類では、これらの成分が比較的速やかに分解・排泄されるため、毒性は比較的低いとされています。
しかし、高濃度または多量に曝露すると、
・縮瞳
・呼吸困難
・筋肉麻痺
などが生じるおそれがあります。
このような症状がみられた場合には、直ちに医師の診療を受ける必要があります。
有機リン系=縮瞳
も重要な暗記ポイントです。
② ピレスロイド系殺虫成分
ピレスロイド系殺虫成分には、
・ペルメトリン
・フェノトリン
・フタルスリン
などがあります。
ピレスロイド系殺虫成分は、除虫菊に含まれる成分から開発されたものです。
比較的速やかに自然分解するため、家庭用殺虫剤に広く用いられています。
ピレスロイド系の殺虫作用
ピレスロイド系殺虫成分は、神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害することで殺虫作用を示します。
ピレスロイド系
→ 神経細胞に直接作用
→ 神経伝達を阻害
と覚えましょう。
フェノトリンは重要
フェノトリンはピレスロイド系殺虫成分です。
シラミの駆除に用いられ、殺虫成分の中で人体に直接適用されるものとして重要です。
そのため、
フェノトリン=ピレスロイド系+シラミ
というセットで覚えておくと便利です。
③ カーバメイト系殺虫成分
カーバメイト系殺虫成分の代表例がプロポクスルです。
プロポクスルは、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで殺虫作用を示します。
ただし、有機リン系殺虫成分とは異なり、可逆的に結合します。
有機リン系 → 不可逆的
カーバメイト系 → 可逆的
という違いが非常に重要です。
また、一般に有機リン系殺虫成分に比べて毒性は低いとされています。
④ オキサジアゾール系殺虫成分
オキサジアゾール系殺虫成分の代表例はメトキサジアゾンです。
メトキサジアゾンもアセチルコリンエステラーゼを阻害することによって殺虫作用を示します。
カーバメイト系と同様に、アセチルコリンエステラーゼに可逆的に結合して阻害します。
⑤ 有機塩素系殺虫成分
有機塩素系殺虫成分として、オルトジクロロベンゼンがあります。
ウジやボウフラの防除などに用いられます。
系統名と成分名をセットで覚えておきましょう。
有機塩素系=オルトジクロロベンゼン
です。
⑥ 昆虫成長阻害成分
昆虫成長阻害成分は、昆虫の成長や変態を妨げることで殺虫作用を示します。
代表的な成分には、
・メトプレン
・ピリプロキシフェン
・ジフルベンズロン
があります。
メトプレン・ピリプロキシフェン
メトプレンやピリプロキシフェンは、昆虫の幼若ホルモンに類似した作用を示します。
その結果、幼虫が正常に成長して蛹になることなどを妨げます。
メトプレン・ピリプロキシフェン=幼虫が蛹になるのを妨げる
と覚えましょう。
ジフルベンズロン
ジフルベンズロンは、昆虫の正常な脱皮を妨げます。
ジフルベンズロン=脱皮阻害
として覚えておくと、メトプレンなどとの区別がしやすくなります。
殺虫剤は同じ成分を長期間連用しない
殺虫剤を使用する際には、殺虫作用に対する抵抗性が生じることがあります。
同じ殺虫成分を長期間連用すると、害虫がその成分に対して抵抗性を持つようになる可能性があります。
そのため、抵抗性が生じるのを避けるため、同じ殺虫成分を長期間連用せず、複数の殺虫成分を順番に使用していくことが望ましいとされています。
これは試験でも狙われやすいポイントです。
忌避剤の代表的な成分
忌避剤は、害虫などが人体に近づくことを防ぐために使用されます。
代表的な忌避成分として、
・ディート
・イカリジン
があります。
① ディート
ディートは、代表的な忌避成分です。
蚊などの吸血性昆虫に対して高い忌避効果を示し、持続性も高い成分です。
ただし、製品によって使用できる年齢や使用方法などが定められているため、製品の表示を確認して使用することが重要です。
② イカリジン
イカリジンも忌避成分です。
ディートと異なり、年齢による使用制限がないことが特徴です。
ただし、製品ごとに使用方法や用法が定められているため、表示に従って使用します。
イカリジン=年齢による使用制限なし
というポイントを覚えておきましょう。
殺虫剤・忌避剤の重要ポイント比較
| 成分・分類 | 重要ポイント |
|---|---|
| 有機リン系 | アセチルコリンエステラーゼと不可逆的に結合 |
| ジクロルボス | 代表的な有機リン系殺虫成分 |
| ピレスロイド系 | 神経細胞に直接作用し神経伝達を阻害 |
| フェノトリン | ピレスロイド系・シラミ駆除・人体に直接適用 |
| カーバメイト系 | アセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害 |
| プロポクスル | カーバメイト系 |
| メトキサジアゾン | オキサジアゾール系 |
| オルトジクロロベンゼン | 有機塩素系・ウジやボウフラの防除 |
| メトプレン | 幼若ホルモンに類似した作用・蛹になるのを妨げる |
| ピリプロキシフェン | 幼若ホルモンに類似した作用 |
| ジフルベンズロン | 昆虫の正常な脱皮を妨げる |
| ディート | 代表的な忌避成分・持続性が高い |
| イカリジン | 年齢による使用制限がない |
ここは絶対に覚えたい!
① ハエ
防除の基本はウジの防除
② 蚊
幼虫はボウフラ
③ ゴキブリ
食品などを汚染する衛生害虫
④ シラミ
フェノトリン
⑤ トコジラミ
シラミではなくカメムシ目
⑥ イエダニ
宿主のネズミの駆除も重要
⑦ 有機リン系
アセチルコリンエステラーゼを不可逆的に阻害
⑧ ピレスロイド系
神経細胞に直接作用
⑨ カーバメイト系
アセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害
⑩ メトプレン・ピリプロキシフェン
幼若ホルモンに類似
⑪ ジフルベンズロン
脱皮を阻害
⑫ ディート
忌避成分・持続性が高い
⑬ イカリジン
年齢による使用制限がない
⑭ 殺虫剤
同じ殺虫成分を長期間連用しない
予想問題
問1
ハエの防除では、成虫を駆除することが最も重要であり、ウジの防除は基本的な対策とはならない。
解説
誤り。
ハエの防除では、ウジの防除が基本です。
通常、有機リン系殺虫成分が配合された殺虫剤が用いられます。
問2
蚊の幼虫はボウフラと呼ばれ、蚊の防除では成虫だけでなく、幼虫の発生源となる水たまりなどへの対策も重要である。
解説
正しい。
蚊の幼虫はボウフラです。
成虫になる前に防除することが重要であり、発生源となる水たまりなどをなくすことも重要です。
問3
トコジラミはシラミの一種であり、アタマジラミやコロモジラミと同じ仲間に分類される。
解説
誤り。
トコジラミはシラミの一種ではなく、カメムシ目に属する昆虫です。
別名ナンキンムシとも呼ばれます。
問4
有機リン系殺虫成分は、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼと可逆的に結合し、その働きを阻害する。
解説
誤り。
有機リン系殺虫成分は、アセチルコリンエステラーゼと不可逆的に結合して、その働きを阻害します。
有機リン系=不可逆的
です。
問5
ピレスロイド系殺虫成分は、神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害することにより殺虫作用を示す。
解説
正しい。
ピレスロイド系殺虫成分は、神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害します。
問6
フェノトリンは有機リン系殺虫成分であり、主にゴキブリの防除に使用される。
解説
誤り。
フェノトリンはピレスロイド系殺虫成分です。
シラミの駆除に用いられ、殺虫成分の中で人体に直接適用されるものとして重要です。
問7
プロポクスルはカーバメイト系殺虫成分であり、アセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害する。
解説
正しい。
プロポクスルはカーバメイト系殺虫成分です。
アセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害します。
問8
メトプレンやピリプロキシフェンは、昆虫の幼若ホルモンに類似した作用を示し、幼虫が蛹になることなどを妨げる。
解説
正しい。
メトプレンやピリプロキシフェンは昆虫の幼若ホルモンに類似した作用を示し、正常な成長や変態を妨げます。
問9
殺虫剤は、殺虫作用に対する抵抗性が生じることを避けるため、同じ殺虫成分を長期間連用することが望ましい。
解説
誤り。
同じ殺虫成分を長期間連用すると、害虫に抵抗性が生じる可能性があります。
そのため、同じ殺虫成分を長期間連用せず、複数の殺虫成分を順番に使用することが望ましいとされています。
問10
イカリジンは忌避成分の一つであり、年齢による使用制限がない。
解説
正しい。
イカリジンは代表的な忌避成分です。
ディートとは異なり、年齢による使用制限がないことが特徴です。
まとめ
殺虫剤・忌避剤では、まず衛生害虫の特徴を押さえましょう。
ハエ → ウジの防除が基本
蚊 → 幼虫はボウフラ
ゴキブリ → 食品などを汚染
シラミ → フェノトリン
トコジラミ → シラミではなくカメムシ目
イエダニ → ネズミの駆除も重要
殺虫成分では、
有機リン系 → アセチルコリンエステラーゼを不可逆的に阻害
ピレスロイド系 → 神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害
カーバメイト系 → アセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害
メトプレン・ピリプロキシフェン → 幼若ホルモンに類似
ジフルベンズロン → 脱皮を阻害
ディート・イカリジン → 忌避成分
という整理が重要です。
特に、
有機リン=不可逆
カーバメイト=可逆
という違いは、選択肢で非常に狙われやすいポイントです。
また、殺虫剤は同じ成分を長期間連用せず、抵抗性が生じることを避けることも重要です。
殺虫剤は「虫を殺す薬」、忌避剤は「虫を近づきにくくする薬」と区別し、衛生害虫・成分・作用をセットで覚えておきましょう。
参考資料
厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」
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