BPOというと、放送倫理・番組向上機構を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし今回は、BPO事業について解説します。
BPO事業とは
BPO事業とは、ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略です。平たく言うと、業務を外部に委託することをいいます。
外部に委託する、という意味では業務委託や下請け会社などが存在しますが、BPOとは企画やオペレーション等どんな業務でも、委託すること全般をいいます。
業務委託契約とは会社と個人(事業主)、あるいは会社同士が結ぶもので、成果物に対して報酬が支払われるといった形態が多いです。
主にBPO事業として外部委託されるパターンは以下のノンコア業務とコア業務の2種類があります。
ノンコア業務
部署なども存在し、分かりやすい名称で言うと、総務や人事・経理などで、ノンコア業務、あるいはバックヤード業務と呼ばれるものです。
ノンコア業務とは、コア業務ではないもの。つまりその業務だけでは利益の生まれないものを指します。
しかし、そういった業務があることで、製造や営業など利益を生む人員が利益を生む仕事だけに専念できたりします。もし営業が事務作業をしているなら、利益効率が落ちてしまいます。企業活動にはコア業務とノンコア業務の両方があり、どちらも必要な業務です。
会社ごとに行う処理の手順や、基準となる作業が異なる、属人科していて、他の人ではできない仕事だ、と捉えられているかもしれません。
その仕事は本当にその人でないとできないのか、というとそうではありません。
ノウハウのない業務
職人のような技術や、接客のようなテクニックなど、ノウハウの必要なものは個人スキルで、そういった個人の能力に頼るものでないものは委託することが可能です。
BPO事業を活用するかどうかの判断基準
企業における人材が不足した場合に、一人一人の仕事の負担量が増えていってしまいます。
今まで10人で行っていた部署の作業を、産休や異動などを気に次期より8人で行う、となった場合、本来は別の営業所や部署から応援が来たり、あるいは新しい人材採用に動いたりするはずです。
しかし、人材が集まらない、人事異動までの期間では求人を行ったり、他部署からの異動で応援を呼ぶこともできないという時に利用しようと検討できます。
その他、定期的に高度な判断を要するものなどが不要で毎月同じことをする業務などはBPO業務として委託することを検討できるでしょう。
人材派遣業とは
人材派遣業とは、派遣スタッフが発注元企業の指揮命令に沿って、発注元企業内で業務を遂行します。労働力の拡充を行うのが人材派遣業です。
報酬の支払いはスタッフの労働時間に手数料を加えた費用を派遣会社へと支払います。
また、派遣会社と労働者派遣契約を締結します。
請負について
外注、下請けなどと呼ばれることもあります。
仕事を受注している会社から案件についてある成果物などを求められる仕事を遂行する個人・事業主を指します。
請負については、成果物を求めているので、その成果物を作成するまでの過程や、必要な人員配置などは請負業者に一任されています。
結果的に成果物が完成していればよく、相見積りなどを通して他社比較をされることもありますが、その際には納期や、金額などを見る傾向にあります。速く・安くを追求しています。
そのため、請負の会社は無理なオペレーションを強いられたり、原価を抑えるなど、商品のクオリティに問題が生じる場合もあります。
BPO導入におけるメリット・デメリット
業務にかかるコストの削減や不足しがちなリソースの補填、経営戦略の実現などがあります。
ここではBPO導入に関するメリット・デメリットをお伝えします。
BPO導入によるメリット
コア業務へリソースを集中させる
多くの企業は、成長期には求人などで人材の追加が間に合わず人員不足に陥りやすくなります。
そんな時にはノンコア業務をBPO化することでその人材をコア業務や、コア業務のサポートに充てることができるようになります。
成長期だけに限らず、繁忙期、高いスキルを持ち平均よりも業務量をこなせる人材が退職してしまった場合など、時間の経過に伴い人員の必要相当量へ変動し、常に一定とは言えない部分をまかなう固定費として捉えるのはもったいないでしょう。
BPOの拡大を担っている要因の一つに、安価な労働力の確保が可能な中国などでBPOの活用が行われています。特に日本語のできる人材を活用することで、コストを30~50%程度削減することも可能です。
コストの削減
ノンコア業務にかかる固定費については変動費として考えることが可能になります。
企業の業績に関わらず発生する固定費は、場合によっては赤字の一因にもなりかねません。
人件費などをBPOサービス利用の変動費に回すことで、業務量によって必要量だけをコストとすることが可能となります。
固定費の変動費化
業界によって時期は異なりますが、繁忙期と閑散期が必ずあるでしょう。また、経理などは月末月初、決算月などに業務量の増加が起こります。それ以外の期間に比べると必要なマンパワーも増えるため、一番多い業務量をこなせる人員を確保する必要が出てきます。
しかし、閑散期には繁忙期よりも必要な人員が少なくなります。社内でノンコア業務にあたっている場合、業務量の波に合わせて人員の増減を行うことは難しくなります。
繁忙期に合わせた人員配置にしておくことで最大限負担の掛からないようにするでしょう。しかし、閑散期には人手が余り、会社側から見ると不要な人件費を払うことになってしまいます。
そういった固定費となっている人件費をBPO業務として外注することで変動費に変え、閑散期には経費を抑えることが可能になります。
BPO導入によるデメリット
解約がしにくい
外部に委託する業務というのは基本的に長期的に続くと思います。
すぐに終わる単発の業務も中にはありますが、長期的にかかるマンパワーや経費の削減を目的として用いることが本来のBPO委託でしょう。
そのため、一度契約してしまうと解約することが難しくなります。
社内システムとの互換性がない可能性がある
会計システムは複数社が販売していたりするため、前から使っていた自社システムと、委託先のシステムが一致しないなどの可能性があります。
契約する前にどのようなシステムを使うのか、またどのような形態で報告・納品されるのかを確認しておきましょう。
情報が漏洩するリスク
ノウハウの必要ない仕事であっても、会計内容では会社がどの程度儲かっているのか、どれぐらいの借金があるのか、業績の良し悪しなどが社外に知られてしまいます。
また、どのような取引先をメインにしているのか、どういった業務内容なのか、など情報が漏洩するリスクを抱えています。
秘密保持契約を結んでいたとしても、情報が社内だけで留まらないということは情報の流出のリスクはあります。そのため、社外に委託する業務の種類は十分に検討する必要性があります。
導入費用がかかる
新たに外部企業に業務を委託する際にはシステム導入費用などが高額になる場合があります。社内か社外か、どちらのリソースを使用する方がメリットとなるのかを考えるべきです。
加えて今まで社内でしていた業務を社外に出す為、社内の人員の業務範囲が変更します。次の業務の引継ぎなど別の業務が発生したりするなどその他雑務が起こることも想定しておく必要があります。
プロセスに強みがある場合
ノンコア業務に関して、企業内で強みのあるプロセスを持っている場合もあり得ます。そんな時には内製化し、さらにはその業務を外販することで他社からBPO業務を受注することもできるでしょう。
経理や会計ソフトを開発し、社内で使用したりソフトを販売するなどするとノンコア業務からも利益を生むことができます。
BPO業務を受注する側においては販売されているソフトを使用し同じフォーマットで会計などのデータを提出することで利益を生み出せます。
コロナ禍とこれからのBPO事業の立ち位置
2020年、コロナが世界的に流行しました。このウイルスによって、世界は大きな変化を強いられました。
コロナで変わった働き方
『ソーシャルディスタンス』『3つの密(密閉・密集・密接)』などの言葉をはじめ、同じ空間内でたくさんの人が集まることが難しくなりました。娯楽施設、電車内、オフィスなどでは換気や出入口に消毒用アルコールを設置するなど各企業への負担は増しました。売上を伸ばすことを目指そうにも集客ハードルは上がりました。
増収へ向けた活動が制限されたこともあり、ランニングコストなど支出の見直しも検討されたことでしょう。
オフィスを手放したり、在宅ワークを併用することでオフィス規模を小さくした企業もありました。
BPO事業の展望は?
コロナが落ち着いてきても、今後はインフルエンザのように上手に付き合っていく必要性があると言われています。
感染者数が減ってもゼロになることはなく、個人も社会も適応していかなければなりません。
今後も部署や業務内容によっては適宜在宅ワークの実施を行い、また社内で行う必要のない業務についてはBPO事業会社へ依頼をしたり、外部委託などを利用していき会社のランニングコストを比較的軽減することが予想されます。