浣腸薬とは
浣腸薬は、便秘の場合に排便を促すことを目的として、直腸内に適用する医薬品です。
一般に「浣腸薬」という場合には、肛門から薬液を注入する注入剤を指すことが多いですが、坐剤として使用するものもあります。
浣腸薬は直腸に直接作用するため、効果が比較的速く現れます。一方で、繰り返し使用すると直腸の感受性が低下し、いわゆる「慣れ」が生じて効果が弱くなることがあります。
そのため、浣腸薬は連用せず、一時的な便秘への対処にとどめることが重要です。
浣腸薬は便秘以外には使わない
浣腸薬は便秘の場合に排便を促すために使用するものであり、便秘以外のときに直腸内容物を排除する目的で使用することは適当ではありません。
便秘に対しても、浣腸薬だけに頼るのではなく、食生活などの生活習慣を改善することが重要です。
特に乳幼児では、便秘の原因を確認せずに安易に浣腸薬を使用することは避けます。
浣腸薬の種類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 注入剤 | 肛門から薬液を直腸内に注入する |
| 坐剤 | 肛門から直腸内に挿入して使用する |
試験では、注入剤と坐剤で使用方法が異なる点が重要です。
① 浣腸薬の注入剤
注入剤は、薬液を直腸内に注入することで排便を促します。
使用時には、薬液の放出部を肛門に差し込み、薬液だまりの部分を絞ることで薬液を押し込むように注入します。
薬液はゆっくり注入する
薬液を注入するときは、ゆっくりと押し込み、注入が終わったら放出部をゆっくり抜き取ります。
急激に注入すると不快感などが生じやすくなるため、ゆっくり行うことが重要です。
薬液を人肌程度に温める
注入する薬液は、人肌程度に温めておくと、不快感が生じにくくなります。
熱くしすぎるのではなく、適切な温度で使用することが大切です。
注入後すぐに排便しない
浣腸薬で非常に重要なのが、注入した直後に排便を試みないことです。
薬液を注入した後すぐに排便しようとすると、薬液だけが排出されてしまい、十分な効果が得られないことがあります。
そのため、便意が強まるまでしばらく我慢することが重要です。
薬液が漏れそうな場合
注入した薬液が漏れ出しそうな場合には、肛門を脱脂綿などで押さえておく方法があります。
使い残した薬液は再利用しない
半量などを使用する用法がある場合でも、使用後に残った薬液を保存して再利用してはいけません。
残液を再利用すると、感染のおそれがあります。
そのため、使用後の残液は廃棄します。
② 注入剤の代表的な配合成分
浣腸薬の注入剤には、グリセリンやソルビトールなどが配合されています。
これらは浸透圧の差によって腸管壁から水分を取り込み、直腸粘膜を刺激して排便を促すことを目的として使用されます。
グリセリン
グリセリンが配合された浣腸薬では、浸透圧の変化によって直腸に刺激を与え、排便を促します。
副作用や使用時の症状として、肛門部の熱感や不快感が現れることがあります。
グリセリンによる立ちくらみ
グリセリンが配合された浣腸薬では、排便時に血圧低下を生じ、立ちくらみが現れるとの報告があります。
こうした症状は、特に体力の衰えている高齢者や心臓に基礎疾患がある人で現れやすいため、使用前に医師などへ相談する必要があります。
肛門・直腸に傷がある場合
グリセリンが配合された浣腸薬を、肛門や直腸の粘膜に損傷があり、出血しているときに使用すると、グリセリンが傷口から血管内に入り、赤血球の破壊(溶血)を引き起こすおそれがあります。
さらに、腎不全を起こすおそれもあります。
そのため、痔出血などの症状がある人では、使用前に医師などへ相談することが重要です。
③ 浣腸薬の坐剤
浣腸薬には、注入剤だけでなく坐剤もあります。
坐剤は肛門から直腸内へ挿入して使用します。
坐剤が柔らかすぎる場合
坐剤が柔らかくなっている場合は、しばらく冷やしてから使用します。
柔らかすぎる状態で無理に挿入すると、使用しにくいだけでなく、適切に挿入できないことがあります。
坐剤が硬すぎる場合
坐剤が硬すぎる場合は、柔らかくなってから使用します。
硬いまま無理に挿入すると、直腸粘膜を傷つけるおそれがあります。
坐剤を挿入した後もすぐ排便しない
坐剤を挿入した後すぐに排便を試みると、坐剤が排出されてしまい、十分な効果が得られないことがあります。
そのため、注入剤と同様に、便意が強まるまでしばらく我慢することが重要です。
坐剤に用いられる成分
浣腸薬の坐剤には、ビサコジル、炭酸水素ナトリウムなどが用いられます。
ビサコジルについては、腸の薬の分野でも扱われる大腸刺激性瀉下成分です。
一方、炭酸水素ナトリウムは、直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を発生させ、直腸を刺激する作用を期待して使用されます。
炭酸水素ナトリウム坐剤の副作用
炭酸水素ナトリウムを主薬とする坐剤では、まれに重篤な副作用としてショックを生じることがあります。
使用後に異常を感じた場合には、使用を中止し、必要に応じて医療機関を受診します。
妊婦は浣腸薬を避ける
浣腸薬は、直腸を急激に動かすことによって流産・早産を誘発するおそれがあります。
そのため、妊婦または妊娠していると思われる女性では、浣腸薬の使用を避けることが重要です。
乳幼児への使用に注意
乳幼児の便秘では、原因を確認せずに浣腸薬を使用することは避けます。
特に乳幼児では、便秘が別の原因によるものである可能性もあるため、安易な使用を避けることが重要です。
こんな症状がある場合は浣腸薬を使わない
便秘に伴って、次のような症状がある場合には、浣腸薬を自己判断で使用しないことが重要です。
- 著しい腹痛
- 吐きけ・嘔吐
- 排便時の出血
著しい腹痛や便秘に伴う吐きけ・嘔吐がある場合は、急性腹症の可能性があります。
急性腹症には、腸管の狭窄、腸閉塞、腹腔内器官の炎症などが含まれます。
このような状態では、浣腸薬の刺激によって症状を悪化させるおそれがあります。
排便時に出血する場合
排便時の出血は、痔による出血だけとは限りません。
直腸ポリープや直腸癌などに伴って出血している可能性もあります。
そのため、排便時に出血がある場合には、浣腸薬で様子を見るのではなく、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
浣腸薬は連用しない
浣腸薬を繰り返し使用すると、直腸の感受性が低下して、いわゆる「慣れ」が生じることがあります。
その結果、浣腸薬を使用しないと排便しにくくなり、医薬品の使用に頼りがちになるおそれがあります。
そのため、浣腸薬は連用せず、一時的な使用にとどめることが重要です。
2~3回使用しても排便がない場合
浣腸薬を2~3回使用しても排便がない場合には、使用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者へ相談することが重要です。
何度も続けて使用するのではなく、便秘の原因を確認する必要があります。
便秘改善には生活習慣の見直しが基本
便秘は、食生活などの生活習慣によって起こることがあります。
そのため、浣腸薬による対症療法だけではなく、便秘になりにくい食生活などへの改善を図ることが重要です。
浣腸薬はあくまでも一時的な対処として使用し、常用しないようにします。
浣腸薬の重要ポイント一覧
| ポイント | 重要事項 |
|---|---|
| 目的 | 便秘時の排便促進。便秘以外の直腸内容物排除には使用しない |
| 種類 | 注入剤、坐剤 |
| 注入剤 | 薬液をゆっくり注入し、放出部もゆっくり抜く |
| 薬液 | 人肌程度に温めると不快感が少ない |
| 注入後 | 便意が強まるまでしばらく我慢する |
| 残液 | 感染のおそれがあるため再利用せず廃棄 |
| 主な注入剤成分 | グリセリン、ソルビトール |
| グリセリン | 肛門部の熱感・不快感、排便時の血圧低下・立ちくらみに注意 |
| グリセリン+粘膜損傷 | 溶血や腎不全のおそれ |
| 坐剤 | 柔らかすぎれば冷やし、硬すぎれば柔らかくして使用 |
| 坐剤の成分 | ビサコジル、炭酸水素ナトリウムなど |
| 妊婦 | 流産・早産のおそれがあるため使用を避ける |
| 乳幼児 | 安易な使用を避ける |
| 著しい腹痛・吐きけ・嘔吐 | 急性腹症の可能性があり、自己判断で使用しない |
| 排便時出血 | 直腸ポリープや直腸癌などの可能性もあり、受診が必要 |
| 連用 | 直腸の感受性低下(慣れ)が生じるため連用しない |
| 2~3回使用しても排便なし | 使用を中止し、専門家へ相談 |
ここは絶対に覚えたい!
浣腸薬で最も重要なのは、「速効性があるから何度も使う」のではなく、一時的な使用にとどめることです。
注入剤では、ゆっくり注入 → ゆっくり抜く → 便意が強まるまで我慢の順番を覚えておきましょう。
また、人肌程度に温める、残った薬液は再利用しないという使用上の注意も重要です。
成分では、グリセリン・ソルビトール → 浸透圧によって水分を取り込み直腸を刺激、ビサコジル → 大腸刺激性瀉下成分、炭酸水素ナトリウム → 炭酸ガスで直腸を刺激と整理します。
さらに、妊婦、乳幼児、著しい腹痛・吐きけ・嘔吐がある人、排便時に出血がある人では安易に使用しないことが重要です。
最後に、「2~3回使っても排便がない → 使用中止して相談」も必ず覚えておきましょう。
予想問題
問1
浣腸薬は便秘の場合に排便を促すことを目的として、直腸内に適用する医薬品である。
解説
正しい。浣腸薬は、便秘の場合に排便を促すことを目的として直腸内に適用されます。
問2
浣腸薬は、便秘以外のときでも、直腸内容物を排除する目的で使用してよい。
解説
誤り。浣腸薬を便秘以外のときに直腸内容物の排除を目的として使用することは適当ではありません。
問3
浣腸薬は繰り返し使用すると直腸の感受性が低下し、いわゆる「慣れ」が生じて効果が弱くなることがある。
解説
正しい。浣腸薬を繰り返し使用すると、直腸の感受性が低下して効果が弱くなり、医薬品の使用に頼りがちになることがあります。そのため、連用しません。
問4
浣腸薬の注入剤は、薬液をできるだけ速く注入したほうが効果が高くなる。
解説
誤り。注入するときはゆっくりと押し込み、注入が終わったら放出部もゆっくり抜き取ります。
問5
浣腸薬の注入剤では、薬液を注入した直後に排便を試みると、薬液のみが排出され、十分な効果が得られないことがある。
解説
正しい。注入後すぐに排便を試みると薬液のみが排出されてしまうことがあるため、便意が強まるまでしばらく我慢します。
問6
半量を使用する浣腸薬で残った薬液は、次回使用するために保管して再利用するとよい。
解説
誤り。残った薬液を再利用すると感染のおそれがあります。使用後は廃棄します。
問7
グリセリンが配合された浣腸薬では、排便時に血圧低下を生じ、立ちくらみが現れることがある。
解説
正しい。グリセリン配合浣腸薬では、排便時に血圧低下を生じ、立ちくらみが現れるとの報告があります。特に高齢者や心臓に基礎疾患がある人では注意が必要です。
問8
グリセリンが配合された浣腸薬は、肛門や直腸の粘膜に損傷があり出血している場合でも安全に使用できる。
解説
誤り。グリセリンが傷口から血管内に入り、溶血を引き起こしたり、腎不全を起こしたりするおそれがあります。痔出血などがある人は使用前に相談します。
問9
浣腸薬は直腸の急激な動きによって流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊婦または妊娠していると思われる女性では使用を避ける。
解説
正しい。浣腸薬は直腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊婦または妊娠していると思われる女性では使用を避けます。
問10
便秘に著しい腹痛や吐きけ・嘔吐を伴う場合でも、浣腸薬を使用すれば問題ない。
解説
誤り。著しい腹痛や便秘に伴う吐きけ・嘔吐がある場合には、急性腹症の可能性があります。浣腸薬の刺激によって症状を悪化させるおそれがあるため、自己判断で使用せず、医療機関を受診するなどの対応が必要です。
まとめ
浣腸薬は、便秘時の排便を促すために直腸内へ使用する医薬品です。
注入剤では、薬液をゆっくり注入し、注入後は便意が強まるまで我慢することが重要です。また、薬液は人肌程度に温め、使用後の残液は再利用しません。
成分では、グリセリン・ソルビトール、ビサコジル、炭酸水素ナトリウムを整理しておきましょう。
注意点では、連用しない、妊婦では使用を避ける、乳幼児への安易な使用を避ける、著しい腹痛や吐きけ・嘔吐、排便時の出血がある場合は使用せず受診につなげることが重要です。
そして、2~3回使用しても排便がない場合は使用を中止し、医師・薬剤師・登録販売者へ相談するという判断も試験で狙われやすいポイントです。

