陶器・磁器、という言葉を聞いたことがありますか?あるいは総称して陶磁器と呼ぶこともあります。陶磁器とはどちらも食器などに使われている物で、陶器と磁器は似たものを使って作られていることからまとめて呼びます。
ここでは陶器と磁器の違いについて説明していきます。
陶器と磁器とは
日常生活の食器などによく使われている陶器と磁器ですが、その違いについて明確に説明できる人はいますでしょうか。
一般的な知識では、これが陶器と磁器の違いだと言うのは少し難しいかもしれません。
どう違うの?そう思ってここを訪問してくださったあなたに、陶器と磁器の違いをお伝えします。
結論から言うと、原材料と焼く際の温度が違います。そのため、硬度も異なります。
陶器はカオリンという陶土(カオリナイトが主成分)を低温で焼きます。
磁器は磁土(長石が主成分)を高温で焼きます。
また、原材料と焼く温度の違いなどから器の透光性、吸水性、打音も異なります。
陶器とは
陶器は陶土という粘土を使って作られます。粘土から作られているため、土ものと呼ばれることがあります。
陶器は低めの温度で焼き上げます。低い温度で焼くため、柔らかく、磁器に比べて割れやすいです。
焼成温度は800~1200℃程度です。
磁器とは
磁器は磁土(じど)という長石などの磁石を主成分とするものでできています。このことから磁器のことを石ものと呼ぶことがあります。
磁器は陶器と比べて、焼く温度が高いこと、そして加工前の原料はきめが細かいことが特徴です。陶器よりも硬度が高くなります。
焼成温度は1200~1400℃前後です。
他にもある陶器と磁器の違い
陶磁器とまとめられているので、似ている部分が多いと考える方もいるかもしれません。
しかし、案外違いの方が多くあります。原材料や焼成温度以外の違いについて説明していきます。
陶器の吸水性・透光性・打音について
素地(きじ)が粗く、吸水性の高いのが陶器です。吸水性を抑えたい場合はゆうやく、うわぐすりと呼ばれる透明なガラス質で覆うこともできます。
吸水性の高さは多孔質という、原料の特徴です。多孔質というのは、空洞が多いということでもあります。厚く作っても陶器の方が磁器よりも軽く仕上げることもできます。
陶器の吸水性はメリットとして考えることができます。表面が多孔質な陶器の器は熱しにくく冷めにくいことから保温性の高さが魅力です。器に乗せたものを少しでも長く温かい状態で楽しむことができます。
吸水性の高さは多孔質のデメリットとして捉えられる場合もあります。吸水性が高い、つまり汚れなども吸収されてしまいます。醤油のような色の濃い液体を長時間入れたままにしておくと色移りすることがあります。
その点については、使用し終わるとすぐに洗うなどで対処できます。
表面を打つ打音は多孔質なことも影響し、少し沈んだような音になります。
土でできている陶器は光を通さず、土ならではの風合いや温かみを感じることができます。
磁器の吸水性・透光性・打音について
磁器の表面には全くと言っていいほど穴がなく、吸水性はほぼゼロです。
高温で焼成することから硬く、薄く造りあげることができるため、見た目を綺麗に仕上げることができます。また、打音も硬いコツコツと澄んだ音がします。
高温で仕上げることで、原料の石の成分が磁質化(ガラス化ともいう)し、ガラスのように透過性を持ちます。色は白が多く、透明な表面の内側が白い、マグカップやお茶碗などを想像できるかと思います。
磁器には、高温で焼成する硬質磁器と、低い温度で焼成する軟質磁器があり、1100~1250℃程度で焼成されるものを軟質磁器と呼びます。原料にも少し違いがあり、硬質磁器はカオリンを含み、軟質磁器はカオリンを含まない(牛骨灰を使用している)という差もあります。
陶器と磁器の差
それぞれにデメリットもありますがメリットに目を向け、うまく付き合うことで最大限活用することができます。
例えば陶器製のコップには取っ手がなく、磁器製には取っ手があります。陶器は多孔質で、厚く作っても比較的軽く、また熱が伝わりにくいため取っ手がなくとも熱い飲み物などが入っていてもそのまま持つことができます。反対に磁器は熱伝導率が非常に高いため、取っ手を持たないと熱すぎて持っていられません。
陶器の素地の粗さはメリットでもありますが、臭いや色の濃いものは陶器に移りやすく、また棚などに片付ける際にもよく水気を切るようにしましょう。乾き具合が足りていないと、陶器はカビが生えやすく管理に手間がかかります。
磁器は陶器と比べて水気の管理などはもう少し簡単です。拭き取ってしまえば片付けても問題ないといえます。また陶器のように表面に穴がないため、色や臭いが付きにくいのも管理のしやすさを手伝っています。
しかし、磁器の方が原料の比重が重いため厚く作りにくく、熱いものを入れた器は直接触ることは難しく、風合いなどをより表現できる味のある物は陶器の方が魅せやすくなります。
それぞれの特長をいかし、美味しい食事のできるお皿を作ったり、買ったりしてみてください。