コーヒーに含まれる成分の一つに「クロロゲン酸」があります。ポリフェノールの一種で、コーヒー豆に多く含まれることから、健康やダイエットとの関係について研究されています。
クロロゲン酸には、糖代謝や脂質代謝に関係する働きが研究されていますが、コーヒーを飲めば血糖値が確実に下がったり、脂肪が効率よく燃焼したりするわけではありません。
また、コーヒー豆は焙煎によって成分の構成が変わります。クロロゲン酸を意識してコーヒーを選ぶ場合は、焙煎度による違いも知っておくとよいでしょう。
この記事では、クロロゲン酸とはどのような成分なのか、血糖値やダイエットとの関係、コーヒーの焙煎による違い、摂取する際の注意点について解説します。
クロロゲン酸とは?コーヒーに含まれるポリフェノールの一種
クロロゲン酸は、コーヒー豆などの植物性食品に含まれるポリフェノールの一種です。コーヒーでは、特に焙煎する前の生豆に多く含まれています。
厳密には、クロロゲン酸という名称は、カフェオイルキナ酸類などの関連化合物を含むグループの説明に使われることがあります。コーヒーに含まれるクロロゲン酸類は一種類だけではありません。
ポリフェノールは、植物が作り出す成分の一群です。さまざまな食品に含まれており、種類によって化学的な構造や性質が異なります。
クロロゲン酸類については、抗酸化作用や糖代謝、脂質代謝などとの関係が研究されています。ただし、試験管内や動物を対象とした研究で確認された作用が、そのまま人の健康効果として現れるとは限りません。
食品に含まれる成分の働きを考える際には、実験で確認された作用と、人を対象とした研究で実際に確認された結果を分けて理解することが大切です。
クロロゲン酸はコーヒーの焙煎で減少する?
クロロゲン酸類の含有量は、コーヒー豆の焙煎によって変化します。
一般に、焙煎が進むほどクロロゲン酸類は減少する傾向があります。焙煎時の熱によって分解などが起こり、成分の構成が変わるためです。
日本食生活学会誌に掲載された研究では、コーヒー生豆に含まれるクロロゲン酸を調べ、焙煎時間によって含有量が減少することが報告されています。
そのため、クロロゲン酸類の含有量を重視する場合は、深煎りよりも浅煎りのコーヒーが選択肢になります。
ただし、実際の含有量は、豆の種類、焙煎条件、抽出方法などによっても異なります。焙煎度だけを見て、飲むコーヒーに含まれるクロロゲン酸の量を正確に判断することはできません。
ポリフェノール全体の量が変わらないわけではない
焙煎によってクロロゲン酸類が減少するからといって、コーヒーに含まれるポリフェノール全体の量が必ず一定に保たれるわけではありません。
加熱によって成分が分解されたり、別の化合物が生成されたりするため、焙煎前後では成分の構成が変わります。
そのため、「深煎りにしてもポリフェノールの総量は変わらない」と一律に説明するのは適切ではありません。
また、クロロゲン酸類が多いコーヒーほど、あらゆる健康効果が強くなると決まっているわけでもありません。健康への影響を考える際は、特定の成分量だけでなく、人を対象とした研究結果も確認する必要があります。
クロロゲン酸の働き① 糖代謝との関係
クロロゲン酸類は、糖代謝との関係について研究されている成分です。
糖質を摂取すると、消化管で分解・吸収され、血液中のブドウ糖の量が変化します。このとき、糖質の消化に関わる酵素や、体内でのブドウ糖の利用などが関係します。
クロロゲン酸類については、糖質の消化に関わる酵素への作用や、肝臓での糖代謝など、複数の仕組みが研究されています。
ただし、クロロゲン酸がアミラーゼなどの酵素に作用する可能性が報告されていることと、コーヒーを飲めば人の食後血糖値が確実に抑えられることは別の話です。
人を対象とした研究でも、摂取する成分の量や形態、対象者、試験方法によって結果が異なります。
クロロゲン酸を摂れば血糖値が下がる?
クロロゲン酸を摂取することで、血糖値に関する良い影響が得られる可能性は研究されていますが、すべての人に同じ効果があるとはいえません。
例えば、健康な過体重の男性15人を対象とした研究では、クロロゲン酸を摂取した後の糖負荷試験で、血糖値やインスリン濃度の一部に差が確認されました。ただし、小規模な研究であり、日常的なコーヒーの摂取によって長期的な血糖管理が改善することまで証明したものではありません。
また、コーヒーにはクロロゲン酸類以外にもさまざまな成分が含まれています。カフェインなどの影響も考慮する必要があるため、コーヒーの作用をクロロゲン酸だけで説明することはできません。
糖尿病などで血糖値の管理を行っている場合は、コーヒーやサプリメントを治療の代わりにせず、医師の指示に従って食事や治療を継続することが重要です。
クロロゲン酸の働き② 脂質代謝とダイエットとの関係
クロロゲン酸類は、脂質代謝や体脂肪との関係についても研究されています。
脂質代謝には、肝臓や筋肉などの組織でのエネルギー利用、脂肪の分解、ミトコンドリアの働きなど、さまざまな仕組みが関係しています。
クロロゲン酸類についても、これらの仕組みに関係する可能性が研究されています。ただし、細胞や動物を用いた実験で確認された作用が、人がコーヒーを飲んだときにも同じ程度に起こるとは限りません。
クロロゲン酸で体脂肪は減るのか
クロロゲン酸類を含むコーヒーについては、体重や腹部脂肪との関係を調べた人を対象とした研究があります。
2019年に公表されたランダム化比較試験では、過体重の成人150人を対象に、クロロゲン酸類を多く含むインスタントコーヒーと、クロロゲン酸類の含有量が少ない対照コーヒーを12週間比較しました。
その結果、クロロゲン酸類を多く含むコーヒーを摂取したグループでは、対照グループと比べて、腹部脂肪面積や体重、腹囲などの指標に有意な差が認められました。
一方、この研究は特定の成分量を含むコーヒーを用いた試験です。一般的なコーヒーを飲めば、同じ結果が得られると証明されたわけではありません。また、研究対象者や期間にも限りがあります。
2023年に公表された、グリーンコーヒー豆抽出物に関するランダム化比較試験のメタ解析でも、体重への影響が検討されています。ただし、解析対象となった試験は3件、合計103人と少なく、長期的な有効性や安全性については、さらなる研究が必要とされています。
したがって、クロロゲン酸類はダイエットとの関係が研究されている成分ではありますが、摂取すれば必ず体脂肪が減ると断定することはできません。
コーヒーを飲むだけで痩せるわけではない
クロロゲン酸類を含むコーヒーを飲むことだけで、確実な減量効果が得られるとはいえません。
体重や体脂肪を減らすためには、日々の食事や身体活動、睡眠などを含めた生活習慣全体が重要です。
また、砂糖やシロップ、クリームなどを多く加えたコーヒーでは、摂取エネルギーが増えることがあります。ダイエット中にコーヒーを取り入れる場合は、飲み物全体のエネルギー量にも気を配りましょう。
クロロゲン酸類の研究結果を、日常のコーヒー摂取やサプリメントの確実な減量効果と同一視しないことが大切です。
クロロゲン酸を含む食品は?
クロロゲン酸類は、コーヒー豆のほか、一部の野菜や植物性食品にも含まれています。
代表的な食品として、次のようなものが挙げられます。
- コーヒー
- ごぼう
- なす
- 一部の果物
ただし、食品によって含まれるクロロゲン酸類の種類や量は異なります。品種、加工、保存、調理方法などによっても含有量は変わるため、食品名だけで摂取量を正確に比較することはできません。
また、赤ワインやチョコレートなどにもポリフェノールが含まれますが、それらに含まれるポリフェノールがすべてクロロゲン酸というわけではありません。
ポリフェノールにはさまざまな種類があり、食品ごとに含まれる成分の構成が異なります。
クロロゲン酸を摂るなら浅煎りコーヒーがよい?
焙煎によってクロロゲン酸類が減少する傾向があるため、含有量を重視する場合は浅煎りのコーヒーが選択肢になります。
ただし、浅煎りなら必ずクロロゲン酸類を多く摂取できるとは限りません。豆の種類や焙煎条件、抽出方法によっても成分量は変わります。
また、クロロゲン酸類の量だけでコーヒーの健康面を評価することもできません。カフェインの摂取量や、飲む時間帯、砂糖などの追加成分にも注意が必要です。
健康目的でコーヒーを選ぶ場合は、特定の成分量だけにこだわるのではなく、無理なく続けられる飲み方を考えることが大切です。
クロロゲン酸のサプリメントを利用する際の注意点
クロロゲン酸類は、グリーンコーヒー豆抽出物などを原料とする健康食品やサプリメントにも利用されています。
こうした製品は、通常のコーヒーとは成分の濃度や摂取量が異なる場合があります。そのため、コーヒーを飲む場合と同じ感覚で摂取量を考えることは適切ではありません。
サプリメントを選ぶ際は、次の点を確認しましょう。
- クロロゲン酸類の含有量や原材料が明記されているか
- 1日当たりの摂取目安量が記載されているか
- 摂取上の注意やアレルギーに関する情報が確認できるか
- 販売元や問い合わせ先が明確か
- 健康効果を過度に強調する表示になっていないか
「天然由来」「植物由来」と表示されていても、必ず安全であるとは限りません。また、成分量が多い製品ほど優れているとも限りません。
持病がある人、医薬品を使用している人、妊娠中・授乳中の人などは、サプリメントを利用する前に医師や薬剤師に相談すると安心です。
なお、クロロゲン酸類を含む健康食品は、疾病の治療を目的とした医薬品ではありません。血糖値や体重の管理を、サプリメントだけに頼らないようにしましょう。
クロロゲン酸についてよくある質問
クロロゲン酸は何に多く含まれていますか?
クロロゲン酸類は、コーヒー豆に多く含まれることで知られています。特に焙煎前の生豆に多く含まれ、焙煎が進むにつれて減少する傾向があります。
ごぼうやなすなどの植物性食品にも含まれますが、含有量は食品や加工条件によって異なります。
クロロゲン酸は熱に弱い成分ですか?
クロロゲン酸類は、コーヒー豆の焙煎によって減少する傾向があります。ただし、成分の変化は単純に「熱に弱い」という言葉だけでは説明できず、焙煎の温度や時間などによって異なります。
クロロゲン酸は血糖値を下げますか?
糖代謝との関係は研究されていますが、クロロゲン酸を摂取すれば血糖値が確実に下がるとはいえません。人を対象とした研究の結果も一様ではなく、摂取量や製品の違いなどを考慮する必要があります。
糖尿病などで血糖値の管理をしている場合は、医師の指示に従って治療を続けてください。
クロロゲン酸を摂れば痩せますか?
クロロゲン酸類を含むコーヒーやグリーンコーヒー豆抽出物について、体重や体脂肪との関係を調べた研究があります。しかし、研究の規模や期間には限りがあり、誰でも確実に痩せると証明されているわけではありません。
減量を目指す場合は、食事や運動など生活習慣全体を見直すことが基本です。
深煎りと浅煎りではどちらがおすすめですか?
クロロゲン酸類の含有量を重視する場合は、浅煎りが選択肢になります。ただし、実際の含有量は豆の種類や焙煎条件、抽出方法などによって異なります。
健康面だけでなく、味の好みやカフェインの摂取量なども考慮して選びましょう。
まとめ
クロロゲン酸は、コーヒー豆などに含まれるポリフェノールの一種です。糖代謝や脂質代謝、体重との関係が研究されていますが、コーヒーを飲むだけで血糖値が確実に下がったり、脂肪が燃焼して痩せたりするとはいえません。
クロロゲン酸類は焙煎によって減少する傾向があるため、含有量を重視する場合は浅煎りコーヒーが選択肢になります。ただし、含有量は豆の種類や抽出条件によっても変わります。
また、グリーンコーヒー豆抽出物などを使ったサプリメントは、通常のコーヒーとは成分量が異なる場合があります。利用する際は、原材料や含有量、摂取目安量、注意事項を確認しましょう。
成分の働きについては、研究で期待されている作用と、人の健康に対して実際に確認されている効果を分けて理解することが重要です。
参考資料
- 日本食生活学会誌:コーヒー中のクロロゲン酸量に及ぼす焙煎時間および抽出条件の影響
- PubMed:Coffee Abundant in Chlorogenic Acids Reduces Abdominal Fat in Overweight Adults: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial
- PubMed:Chlorogenic acid in green bean coffee on body weight: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
- Diabetes Care:Acute Effects of Decaffeinated Coffee and the Major Coffee Components Chlorogenic Acid and Trigonelline on Glucose Tolerance
※この記事は、クロロゲン酸に関する一般的な情報を提供するものであり、疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。健康状態に不安がある場合や、サプリメントの利用について判断に迷う場合は、医師や薬剤師に相談してください。


